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行政書士
民泊や旅館業を運営していると、騒音、ごみ、喫煙、共用部の使い方、深夜の出入りなどについて、近隣住民から連絡を受けることがあります。
そのときに避けたいのは、「宿泊者へ注意しました」で終わらせることです。電話を受けた時刻、現場で起きていること、宿泊者への指示、改善の有無、住民への回答まで記録しなければ、同じ問題が繰り返されたときに原因を特定できません。
対応が遅い、連絡がつかない、説明した運営体制と実態が違う状態が続けば、住民から保健所・区役所・警察・消防等へ相談されることもあります。
この記事では、住宅宿泊事業・特区民泊と、簡易宿所を含む旅館業で近隣クレームを受けたときの初動、現場対応、記録、行政への説明、再発防止を実務の順に解説します。
まだ開業前で、近隣説明が必要か、誰にどのような方法で伝えるべきかを確認したい方は、まず民泊・旅館業の近隣説明は必要?対象範囲・方法・開業遅延を防ぐポイントをご覧ください。開業前の周知と、開業後の苦情対応を同じ管理体制で設計しておくと、説明内容と実際の対応が食い違うリスクを減らせます。
※この記事は2026年8月22日時点の公表資料を基にしています。緊急時は安全確保を優先し、必要に応じて警察・消防・医療機関へ連絡してください。
結論:初動で「安全確認・停止指示・記録開始」を行う
近隣クレームを受けたら、反論や謝罪だけで終わらせず、安全確認、原因行為の停止指示、現場対応の判断、住民への経過連絡、記録開始までを一続きで行います。緊急性があれば警察・消防等への連絡を優先します。
STEP.1安全と緊急性を確認する火災、急病、暴力等が疑われる場合は、警察・消防等への連絡を優先します。STEP.2迷惑行為を止め、記録を始める宿泊者へ連絡し、発生日時、申出内容、実施した対応を記録します。STEP.3必要に応じて現場を確認する電話で状況が改善しない場合は、管理体制に従って現地対応します。STEP.4住民へ回答し、再発防止へつなげる確認結果、実施した対応、今後の連絡方法を伝え、運営ルールを見直します。

近隣クレームを受けたときは、正しさを争う前に、現在進行中の迷惑行為や危険を止めます。
基本の初動は次のとおりです。
- 連絡者、時刻、場所、状況を聞き取る
- 火災、暴力、負傷、不審者等の緊急性を判断する
- 宿泊者へ直ちに連絡し、原因行為の停止を指示する
- 管理責任者へ共有し、現場出動の要否を判断する
- 改善を確認し、住民へ経過又は回答予定を伝える
- 対応記録を残し、翌営業日までに再発防止を決める
住宅宿泊事業では、周辺住民からの苦情・問い合わせへ適切かつ迅速に対応する必要があります。国の案内では深夜早朝を問わない応答、注意しても改善しない場合の現場対応、緊急時の関係機関への連絡などが示されています。
家主不在型で住宅宿泊管理業者へ委託している場合の役割は、家主不在型民泊の近隣トラブルは誰が対応する?事業者・管理業者の役割で詳しく整理しています。
| 受付時の状況 | 最初の判断 |
|---|---|
| 火災、暴力、負傷、侵入などが疑われる | 安全を優先し、警察・消防・医療機関への連絡を検討する |
| 騒音、ごみ、喫煙、共用部での滞留が続いている | 宿泊者へ具体的な停止指示を出し、改善を確認する |
| すでに収まっているが繰り返している | 記録を照合し、予約条件・設備・管理体制を見直す |
| 行政へ通報・相談済みと言われた | 記録と事実を整理し、自治体への説明担当を決める |
無料で使える苦情受付・対応記録
記録票は、受付、緊急性、停止指示、現場確認、住民回答、行政共有を時系列で残すためのひな型です。施設の管理体制、自治体ルール、個人情報の取扱いに合わせて調整してください。
クレームを受けたときの聞き取り項目

受付時に発生場所、継続状況、緊急性、連絡先を確認し、記録を開始します。
電話に出た担当者が、相手の主張を評価したり反論したりする必要はありません。まず、対応に必要な事実を聞き取ります。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 受付日時 | 電話・メールを受けた年月日と時刻 |
| 連絡者 | 氏名、部屋・建物、連絡先。伝えたくない場合は無理に求めない |
| 発生場所 | 客室、廊下、玄関前、道路、ごみ置場等 |
| 発生時刻 | いつから、現在も続いているか |
| 内容 | 騒音、ごみ、喫煙、誤訪問、駐車、危険行為等 |
| 緊急性 | 火災、暴力、負傷、侵入等の有無 |
| 希望 | 直ちに止めてほしい、結果連絡がほしい等 |
| 受付者 | 対応した担当者名 |
聞き取り中は、「宿泊者ではないと思います」「この程度なら問題ありません」と決めつけません。監視カメラ、入退室記録、予約情報、現場状況等を確認してから判断します。
相手が感情的な場合でも、まず「ご連絡ありがとうございます。状況を確認し、○分以内に折り返します」と対応予定を伝えます。すぐに結論が出ない場合は、回答期限を明示します。
緊急性を判断する
直ちに関係機関への連絡を検討するケース
- 火災、煙、ガス臭がある
- 暴力、器物損壊、住居侵入等が起きている
- 負傷者、急病人がいる
- 宿泊者と住民が対面で激しく対立している
- 危険物、薬物、犯罪を疑う具体的事情がある
このような場合は、施設側だけで解決しようとせず、必要に応じて警察・消防・医療機関へ連絡します。そのうえで、管理責任者も現場状況を確認します。
通常の管理対応から始めるケース
- 室内の話し声や音楽が大きい
- 廊下や玄関前で会話・滞留している
- ごみを指定外の場所へ置いている
- 共用部で喫煙している
- 間違った部屋のインターホンを押している
- スーツケースの音や深夜の出入りが続く
通常の苦情でも、深夜に長時間放置すれば対立が大きくなります。宿泊者への連絡、改善確認、必要な現場対応を速やかに行います。
苦情の種類ごとの初動
騒音

騒音が続く場合は宿泊者へ停止を求め、改善しなければ現場対応へ移ります。
宿泊者へ連絡し、具体的に何を止めるか伝えます。
- 窓を閉める
- 音楽・テレビの音量を下げる
- 室内外の会話を止める又は小さくする
- バルコニー・玄関前・道路で滞留しない
- 人数超過やパーティー状態を解消する
「静かにしてください」という抽象的な注意だけでなく、原因行為を具体的に指定します。数分後に改善したか確認し、改善しなければ現場対応へ切り替えます。
ごみ

ごみの状態を記録して速やかに是正し、案内や回収方法の改善につなげます。
ごみが家庭ごみの集積所や共用部へ出されている場合、宿泊者へ戻させるか、管理側で回収します。
住宅宿泊事業や旅館業から出るごみは、家庭ごみと同じ扱いにできない場合があります。自治体の事業系ごみのルールと、契約している回収方法を確認します。
記録では、ごみの場所・種類・量・写真、回収者、回収時刻を残します。分別案内だけでなく、宿泊者が迷わず置ける施設内の保管場所を整備します。
共用部・私道・道路での迷惑行為
共同住宅では、廊下、エントランス、エレベーター、駐輪場等のルール違反が問題になりやすくなります。
- 喫煙
- 飲食や滞留
- 荷物の放置
- 無断駐車・駐輪
- オートロックの共連れ
- 私道での会話・撮影
宿泊者へ禁止行為と移動先を具体的に伝えます。管理規約・使用細則に違反する場合は、建物管理者への報告も検討します。
誤訪問・道迷い
宿泊者が近隣住宅のインターホンを押す、別のマンションへ入ろうとする苦情もあります。
予約ページやチェックイン案内に、建物外観、正しい入口、目印、地図、夜間の経路を掲載します。施設名や部屋番号を外から確認できない場合は、法令・管理規約・景観ルールの範囲で案内表示を見直します。
住民への威圧・直接交渉
宿泊者と住民が直接言い争っている場合は、宿泊者に住民との接触を止めるよう伝え、管理側が窓口になります。
住民へ宿泊者と直接話し合うよう求めたり、個人情報を伝えたりしません。安全を確保し、必要なら警察へ相談します。
いつ現場へ向かうか
電話やメッセージで注意しても、必ず改善するとは限りません。
次の場合は、現場対応を検討します。
- 宿泊者と連絡が取れない
- 注意後も騒音等が続く
- 状況が確認できず、危険性を否定できない
- 住民と宿泊者が対立している
- ごみ・共用部の問題をその場で除去する必要がある
- 同じ滞在中に苦情が繰り返される
住宅宿泊管理業者について、国の案内は、必要に応じて速やかに現地へ赴き、苦情から30分以内を目安とし、交通事情等により時間を要する場合は60分以内を目安としています。これは、すべての旅館業施設に全国一律で「30分」と課すルールではありません。自治体がより厳しい基準を定めている場合や、契約で短い時間を約束している場合は、それに合わせます。
現場担当者には、本人確認、宿泊契約上の警告・退室手順、緊急連絡先を事前に共有します。住宅宿泊管理業者が宿泊者へ退室を求める可能性がある場合は、委託契約上の権限も確認しておきます。
住民への回答は「確認結果・対応・次の連絡」を伝える

住民への回答では、確認した事実、行った対応、次に連絡する時期を具体的に伝えます。
住民への回答は、次の3点に分けると伝わりやすくなります。
- 確認結果:何が起きていたか、確認できた範囲
- 対応:宿泊者への注意、現場対応、回収等
- 次の連絡:再確認時刻、追加回答日、再発防止の報告予定
確認できていないことを断定せず、宿泊者の個人情報も伝えません。
たとえば、次のように伝えます。
ご連絡いただいた騒音について、宿泊者へ窓を閉め、会話を控えるよう指示しました。現在は静かになったことを確認しています。今回の内容は記録し、明日までに宿泊者案内と夜間の確認方法を見直します。再度続く場合は、この番号へご連絡ください。
謝罪だけで終わらせず、何をしたかを説明します。一方で、原因が施設利用者と確認できない段階では、過失や賠償を即座に認める回答をせず、事実確認を行います。
クレーム記録に残す内容
住宅宿泊管理業者は、苦情の発生日時、申出者の属性、内容、対処状況等を把握できる範囲で記録し、事業者へ報告する必要があります。旅館業でも、自治体への説明や再発防止のため、同程度の記録を残すことが重要です。
| 区分 | 記録内容 |
|---|---|
| 受付 | 日時、方法、受付者、連絡者 |
| 事象 | 場所、内容、開始時刻、継続状況 |
| 予約 | 予約番号、宿泊人数、代表者、滞在期間 |
| 初動 | 宿泊者への連絡時刻、指示内容、応答 |
| 現場 | 出動判断、到着時刻、確認内容、写真 |
| 解決 | 改善確認時刻、回収・退室等の対応 |
| 回答 | 住民への連絡時刻、説明内容、次回連絡 |
| 共有 | 事業者、管理業者、建物管理者、行政等への報告 |
| 再発防止 | ルール、設備、案内、体制の変更 |
録音・写真・防犯カメラ映像等を扱う場合は、必要性、保存期間、閲覧者、個人情報保護に配慮します。
行政へ通報・相談されたときの対応
近隣住民から保健所・区役所等へ相談が入ると、事業者又は管理業者へ事実確認の連絡が来ることがあります。
このとき、苦情の相手を探したり反論したりするのではなく、次の資料を整理します。
- 届出・許可・認定の情報
- 施設外部の連絡先表示
- 管理体制と緊急連絡網
- 宿泊者向けの騒音・ごみ・共用部ルール
- 該当日の予約・入退室記録
- 苦情受付から改善確認までの時系列
- 現場写真、ごみ回収記録等
- 過去の同種苦情と再発防止策
- 近隣説明時に伝えた内容
行政から改善の指導や報告を求められた場合は、期限と提出方法を確認し、実際に運用へ反映します。書類だけ整えて現場が変わらなければ、同じ苦情が再発します。
「近隣説明時には24時間対応すると説明したのに、実際は深夜に電話がつながらない」など、説明と運営が一致していない点があれば、体制そのものを見直します。
東京都では2026年7月から、騒音等の迷惑行為、施設の開設、違法営業が疑われる施設等の相談を都内全域から受け付ける東京都民泊コールセンターが開設されています。施設の直接窓口だけでなく、行政へ相談が届く経路も増えているため、連絡先表示、受付記録、改善内容を日常的に整えておく必要があります。
行政から連絡が来てから記録を集めると、時系列や対応結果を正確に再現できないことがあります。苦情記録、住民への回答、改善内容、追加・再周知の要否を一つの流れで整理したい場合は、早い段階で専門家へ相談すると対応方針を決めやすくなります。
再周知が必要になる場合
クレームが一件あっただけで、必ず近隣説明を最初からやり直すわけではありません。しかし、次の場合は、自治体へ追加説明・再周知・変更手続の要否を確認します。
- 事前周知の対象漏れが判明した
- 事業者、管理業者、緊急連絡先等を変更した
- 施設規模、定員、営業計画を大きく変更した
- 住民へ説明した対策と実際の運営が異なる
- 自治体の条例・規則・ガイドラインが再周知を求める変更をした
- 行政から追加説明や改善報告を求められた
対象漏れによる追加・再周知は、申請や開業を遅らせる原因になります。範囲の確認方法は、民泊・旅館業の近隣説明範囲はどこまで?敷地・同一建物・私道の調査方法で詳しく解説しています。
再発防止は苦情の種類ごとに変える
騒音が繰り返される
- 予約前にパーティー禁止を明示する
- チェックイン時に静穏時間を説明する
- 多言語の室内表示を見直す
- 騒音センサー等の導入を検討する
- 人数超過を検知する運用を作る
- 苦情後の警告・退室基準を決める
ごみが繰り返される
- 施設内の保管場所を分かりやすくする
- 分別表示を写真付きにする
- 清掃・回収頻度を増やす
- 事業系ごみの契約を見直す
- 共用の家庭ごみ置場へ出せないことを明示する
誤訪問が繰り返される
- 予約サイトの地図ピンを修正する
- 建物外観と入口写真を追加する
- 夜間でも分かる目印を案内する
- タクシー・送迎向けの到着場所を指定する
- 私道・隣地へ入らない案内を追加する
連絡が遅いと言われる
- 苦情電話を予約問い合わせと分ける
- 一次受付と現場担当の役割を分ける
- 夜間の当番とバックアップを設ける
- 受電不能時の転送・折返し基準を決める
- 現場到着時間を定期的に測る
開業前の案内文、説明会、地域との関係づくりは、民泊・旅館業の近隣説明のやり方|案内文・ポスティング・説明会・記録で整理しています。説明時に伝えた対策と、クレーム対応の実運用を一致させることが重要です。
やってはいけない対応
住民へ宿泊者と直接話すよう求める
対立や安全上の問題につながります。事業者又は管理者が窓口になります。
連絡者を「クレーマー」と決めつける
同じ内容が繰り返されている場合、運営上の原因が残っている可能性があります。記録から傾向を確認します。
宿泊者へ注意しただけで完了にする
改善確認と住民への回答まで行います。改善しなければ現場対応へ切り替えます。
実行できない時間や結果を約束する
「必ず10分で到着する」「二度と苦情は起きない」などの約束は避け、実際の体制に合う対応目安を示します。
行政から連絡が来るまで記録を作らない
後から正確な時系列を再現できません。受付と同時に記録を始めます。
まとめ:苦情対応は「止める・確認する・伝える・直す」
- 連絡を受けたら、状況・緊急性・継続中かを聞き取る
- 緊急時は警察・消防等へ連絡し、安全を優先する
- 宿泊者へ具体的な停止指示を出し、改善を確認する
- 必要に応じて速やかに現場へ向かう
- 住民へ確認結果、対応、次の連絡予定を伝える
- 受付から解決までを時系列で記録する
- 行政への説明と再発防止に同じ記録を使える状態にする
参考にした公式情報
著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。


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