2026年7月1日以後に渋谷区で新たに住宅宿泊事業を届け出る場合、制限区域が広がり、家主居住型等の限定された例外に該当しない施設は営業できる期間が年間約63日に絞られます。届出の60日前までの近隣周知も必要です。
旅館業も、同日以後の新規申請では60日前からの標識、説明会、営業従事者の常駐が加わりました。
ただし、制度、住所、届出・申請日、既存施設かどうかで適用が違います。
渋谷区の改正は「民泊ができなくなった」とまとめて語られがちですが、制度ごとに条件が異なるため、一括りにすると検討できる選択肢が見えにくくなります。この記事では、住宅宿泊事業と旅館業を分け、さらに2026年7月1日以後の新規と、それ以前からの既存施設を分けて、いま適用されている渋谷区のルールを整理します。なお本文は2026年8月27日時点で、渋谷区の公式ページと手引き・改正概要を確認して作成しています。
渋谷区の2026年改正は、届出・申請日と制度で影響が変わる

渋谷区の2026年7月1日改正は、住宅宿泊事業の条例と旅館業法施行条例の両方に及びます。制度が違えば手続も要件も別になりますので、自分がどの区分に当たるかが検討の出発点になります。
次の表は、「どの制度か」と「2026年7月1日以後の新規か、それ以前からの施設か」で、影響の出方を大きくつかむためのものです。個別の可否はこの表だけでは決まりません。
| 制度 | 時期 | 主に影響する内容 |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業 | 7月1日以後の届出 | 制限区域の拡大、制限期間外の営業可能日、60日前までの近隣周知、廃棄物関係書類 |
| 住宅宿泊事業 | 6月30日以前の届出 | 改正前の制限・周知ルールが続く範囲(届出内容により異なる)、届出住宅の情報公表、近隣からの求めへの誠実な対応 |
| 旅館業 | 7月1日以後の許可申請 | 申請前の標識設置、説明会の実施と報告、営業従事者の常駐 |
| 旅館業 | 改正前からの許可施設 | フロントを設けない施設の緊急連絡先等の表示、誠実な対応、許可施設の情報公表 |
住宅宿泊事業は届出、旅館業は許可であり、審査の性質も準備期間も異なります。両方を「民泊の規制」とまとめて検討すると、必要な時間を読み違えます。
一次情報は、渋谷区の住宅宿泊事業(民泊)についてと旅館業についてで公開されています。
住宅宿泊事業は制限区域と例外条件が変わった
2026年7月1日以後の新規届出では、事業を制限する区域に、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域が追加されました。従来から対象とされてきた文教地区や住居専用地域と合わせて、制限のかかる範囲が広がっています。
制限区域に当たる場合、条例で定める制限期間中は住宅宿泊事業を実施できません。つまり、1年のうち制限期間を除いた日数が、営業できる期間になります。渋谷区の改正概要では、この営業できる日数が年間63日と示されています。年間180日という法律上の上限を前提に収支を組んでいると、計画が成り立たなくなる可能性があります。
制限期間が具体的にどの時期を指すかは、渋谷区の手引きと改正概要で確認する事項です。物件が制限区域に入る場合は、原文で期間の範囲を確かめてください。
例外は限定的で、主に次の条件が示されています。
- 個人の事業者であること
- 管理する居室が5以下であること
- 事業者自身の居住について、次のいずれかに当たること
- その住宅に事業者自身が居住していること
- 生活の本拠が同一の建物または同一の敷地内にあること
- 生活の本拠が隣接する敷地にあること
例外に該当するかどうかで、営業できる期間の前提そのものが変わります。該当する可能性がある場合は、物件契約や設備発注の前に条件を整理し、区へ確認しておくと、収支計画の作り直しを避けられます。
条件の全体像を含め、詳しい要件は2026年7月以後の手引きと改正の概要に記載があります。
注意したいのは、従来あった半径100メートル以内の管理業者事務所等による特例が廃止された点です。管理業者への委託を前提に営業日数を確保する組み立ては、改正後は同じようには使えません。
一方で、「家主居住型に一本化された」わけでも、「家主不在型はすべて年間63日」でもありません。結論は物件の住所と用途地域、そして事業者の属性で変わります。用途地域は渋谷区の公式案内と都市計画情報で確認します。境界付近の物件は区域の判定が分かれるため、窓口で個別に確認します。この記事では特定住所の判定は行いません。
なお、こうした営業日数や区域の制限は、渋谷区に限らず自治体の上乗せ条例によって生じます。仕組み自体を整理したい場合は、都道府県で民泊のルールが違う?上乗せ条例による営業日数制限と対応策もあわせてご覧ください。
届出の60日前までに近隣周知が必要になった
近隣住民等への事前周知は、従来の7日前から60日前へ変更されました。周知の対象範囲も見直されています。どこまでが対象かは、改正後の手引きで確認します。あわせて、周知を行った記録の区への提出と、求めがあった場合の説明対応が必要です。
廃棄物処理業者の許可番号や契約書等、ごみの処理体制を示す書類は、届出の手続のなかで区の確認を受けます。清掃と廃棄物の運用を決める段階で準備しておくと、届出直前の手戻りを避けられます。
事業計画への影響は、この60日が最も大きくなります。物件を契約してから届出までに、周知の準備、実施、記録の整理、区とのやり取りが挟まるため、賃料や借入の発生時期と収入開始時期のずれを見込んでおく必要があります。「届出をすればすぐ営業できる」前提のスケジュールは、渋谷区では現実的ではありません。
住宅宿泊事業の周知では、対象範囲の測り方や書面の配布方法がつまずきやすい部分です。実務的な進め方は近隣説明の記事で詳しく扱っています。
周知先の特定も判断が分かれます。弊所が扱った渋谷区の案件では、周知すべき町会等の連絡先が分からないまま準備が止まりかけた例がありました。分からないという理由で周知先を推測で省略すると、届出前後に周知のやり直しを求められ、開業時期と賃料負担の期間が後ろへ動きます。この案件では、区の担当部署へ照会して周知先を確定させました。対象範囲の見当がつかない段階で区への確認や専門家への相談を検討すると、日程の遅れを抑えられます。
旅館業は標識・説明会・常駐が新たな前提になった
旅館業では、2026年7月1日以後の新規許可申請に対して、申請前の手続が加わりました。旅館・ホテル営業でも簡易宿所営業でも、許可を取る前に地域へ説明する工程が加わった点が改正の柱です。
- 標識:許可申請の少なくとも60日前から許可を受けるまでの間、掲示します。大きさは縦1.2メートル以上、横0.9メートル以上とされ、設置後7日以内に区への届出が必要です。
- 説明会:許可申請前に実施します。少なくとも7日前までに周知したうえで開催し、実施後7日以内に区へ報告します。
- 常駐:営業従事者を、施設内、同一敷地内、または隣接する敷地内に置きます。原則として営業時間中は常駐させます。常駐する場所については、便所等の設備の場所に関する要件も定められていますので、改正概要で確認します。
詳細は渋谷区の旅館業法施行条例・細則 改正の概要で確認できます。
標識と説明会は、いずれも許可申請より前に済ませる工程です。標識は申請の少なくとも60日前から掲示しますので、開業日からの逆算ではなく、申請日を起点にそれ以前の日程を組む必要があります。物件の契約時期や工事の日程も、この前倒し分を織り込んで検討します。
ここでの常駐は、旅館業の営業従事者に関する要件です。住宅宿泊事業で問われる管理や対応の体制とは、根拠となる制度が異なります。人員体制と人件費の見積りは、どちらの制度で進めるかを決めてから行います。
2026年6月30日以前の施設にも確認が必要な項目がある
改正前から営業している既存施設でも、「改正前だから何も関係ない」とは言い切れません。制限や周知には経過措置がある一方で、施設の運営そのものに及ぶ項目もあります。
住宅宿泊事業では、2026年6月30日以前に届け出た住宅に旧制度の経過措置があります。ただし、経過措置がどこまで及ぶかは届出の内容と時期によって変わります。自己判断せず、届出の時期と内容を示して区へ照会すると、適用範囲を確定できます。
旅館業では、改正前の基準で許可を受けた施設と、改正後の新規申請に課される標識・説明会・常駐の要件を分けて考えます。そのうえで、フロント(玄関帳場)を設けない施設について緊急連絡先等を見やすい位置に表示することは、既存施設にも及びます。表示すべき事項の具体的な内容は、前掲の旅館業法施行条例・細則 改正の概要に記載があります。
両制度に共通して、届出住宅や許可施設の情報が区により公表されること、近隣住民や町会等から説明や協議を求められた際に誠実に対応することは、既存施設にも関係します。
契約前に確認する順番
次の順序で条件をそろえると、無駄な調査と手戻りを減らせます。
- 物件の住所から、用途地域や文教地区等の指定を確認する
- 住宅宿泊事業と旅館業のどちらで進めるかを決める
- 届出または許可申請の時期が2026年7月1日以後かを確定する
- 事業者本人の居住実態と管理する居室数を確認する(住宅宿泊事業の例外を検討する場合)
- 近隣周知の対象範囲と、旅館業なら標識・説明会・常駐の体制を設計する
- 建築や消防の要件を確認する
手順4の「事業者本人の居住実態と管理する居室数」は特に判断が分かれる項目のため、弊所で扱った実務例を2つ挙げます。いずれも当時の案件条件のもとでの個別確認であり、そのまま一般の結論として使えるものではありません。
1つ目は、居住の実態に関する例です。事業者本人が遠方に住み、知人だけが物件に住む形でも家主居住型に当たると考えるケースがあります。2025年5月に渋谷区保健所へ個別に確認した案件では、この状態は家主居住型として扱わないとの回答でした。例外に当たらないと分かれば営業できる日数の前提が変わり、家具や運営委託の発注後であれば計画の組み直しが生じます。事業者本人の生活の本拠がどこにあるかを先に整理し、物件契約や設備発注の前に区の見解を確かめる進め方が有効です。
2つ目は、法人で進める場合です。法人が届け出れば手続が簡単になる、あるいは代表者が住めば例外に当たると考えてしまう場面があります。2026年2月の個別確認では、法人の届出にあたって役員関係の書類や代表者の記載を細かく確認された例がありました。書類の不足は届出の受理までの日数に直結し、60日前周知の日程とも重なります。法人であることと例外に当たるかどうかは別の論点ですので、事業主体を法人にするか個人にするかを決める段階で相談すると、後戻りが少なくなります。
渋谷区以外の物件も比較している場合は、区ごとの営業日数や周知期間の違いを先に見ておくと、候補の絞り込みが早くなります。
渋谷区で判断が難しい物件は、条件をそろえて確認する
渋谷区の結論は、住所、住宅宿泊事業か旅館業か、届出・申請の時期、事業者本人の居住計画、管理する居室数、周知や常駐の体制という複数の条件が組み合わさって決まります。どれか一つが変わるだけで、営業できる日数も開業までの期間も変わります。
無料物件チェックでは、次の点を一緒に整理できます。
- その住所と建物で、住宅宿泊事業と旅館業のどちらを検討できるか
- 制限区域や例外条件を踏まえたときに、営業日数がどう変わりうるか
- 2026年7月1日の前後で、どの手続が適用されるか
- 周知や常駐を含めた、開業までの現実的な順序
相談の際は、物件住所、平面図、所有か賃貸かの関係、事業者となる個人・法人、開業希望日、事業者本人の居住予定をご用意ください。条件が揃うほど、確認すべき点と区へ照会すべき点を早く切り分けられます。手元の資料がそろった段階で、無料物件チェックからご連絡ください。
なお、相談によって許可や届出の受理、収益を保証するものではありません。契約や設備発注を進める前に、判断材料を揃えるための場としてご利用ください。
著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。

