お客様
行政書士
民泊・旅館業の開業費用は、「申請代行料」だけを比べても判断できません。制度、物件の現況、図面の有無、消防・建築上の対応、近隣周知、運営体制、工事の範囲で、必要な支出と確認順が変わります。
自力申請は行政書士報酬を抑えられる一方、図面・書類・消防・自治体追加手続を誰が確認するかを自分で担います。専門家へ依頼しても、行政手数料、工事費、実費、専門家の追加関与まで自動的に含まれるわけではありません。見積もりでは、金額と同時に「含む作業・含まない作業・顧客側で決める事項」を確認しましょう。
- 直接費:行政手数料、報酬、図面、消防、建築・工事、周知、証明書・交通等の実費
- 運営準備:入退室、駆けつけ、清掃、ゴミ、緊急時対応を成立させる費用と担当
- 手戻り:契約・着工・申請後の変更で生じる再設計、再工事、追加手続、空家賃など
総額は「申請料」ではなく、8つの費用箱に分けて見る
見積もりを比較するときは、行政書士報酬の安さだけで結論を出さず、次の項目を別々に書き出します。自治体、営業種別、建物面積、既存図面、工事範囲、周知件数で変わるため、全国共通の総額は置けません。
- 行政手数料:許可・認定等の手数料。制度と申請先で異なる。
- 行政書士報酬:事前協議、書類、提出、補正、検査立会い、周知など、どこまでを依頼するかで変わる。
- 申請図面・測量:既存図面の利用可否、現況との一致、建物の規模・複雑さ、建築士等の関与で変わる。
- 消防:事前相談、手続、設備、工事、専門家の関与を分けて確認する。
- 建築・工事:間取り・水回り・用途・設備の変更、復旧や追加工事の範囲を確認する。
- 近隣周知:自治体・制度で要否、対象、方法が変わる。
- 運営体制:入退室、清掃、ゴミ、駆けつけ、緊急時対応を誰が担うかを決める。
- 実費と手戻り:証明書・郵送・交通等の実費に加え、確認不足で発生する再設計・再工事・追加手続を見込む。
行政手数料、専門家費用、工事費、実費を一つの「申請費用」に混ぜないことが重要です。報酬に含まれる作業と、別途見積となる工事・消防・建築関係の作業を分ければ、比較する前提がそろいます。
公開中の申請支援料金は、条件と業務範囲をセットで確認する
2026年8月31日時点で公開確認済みの当事務所の料金は、50〜199㎡の住宅宿泊事業が25万円、旅館業が38万円(いずれも税別)です。いずれも申請用図面作成と近隣周知を含む条件での案内です。
これは、上記の面積・制度を前提とする当事務所の申請支援料金であり、全物件の開業総額ではありません。行政手数料、消防、建築・工事、実費は、申請支援料金と分けて確認します。申請用図面作成込みの対応は3階建て戸建てまでを前提とし、マンション一棟などは図面・建物条件と必要な専門家の関与を確認したうえで個別見積となります。
住宅宿泊事業の25万円の適用条件、業務範囲、追加費用、自力申請との役割分担は次の記事で確認してください。
旅館業の38万円に含まれる支援と、別途費用になり得る条件は次の記事で確認してください。
「図面込み」「申請代行込み」の対象範囲は、見積書で確認してください。消防設備・消防手続、建築士の関与、工事、行政手数料、証明書・交通等の実費は、別途となる場合があります。
対象面積、制度、図面の前提、周知、提出・補正・検査立会いの範囲と、追加費用が生じる条件を分けて確認しましょう。
自力申請と依頼は、作業を誰が担うかで比べる
自力申請が向くかどうかは、制度名だけでは決まりません。現況と図面が一致し、必要書類、消防・建築の確認先、自治体の追加手続、運営体制を自分で管理できるかを見ます。申請書の提出だけを外部へ依頼しても、他の工程が未決定なら総額と工程の不確実性は残ります。
| 比較する観点 | 自力で担う場合 | 依頼して整理する場合 |
|---|---|---|
| 調査・書類・図面 | 自分で条件を確認し、資料を収集・照合する | 依頼範囲に応じて、必要資料・確認先・申請図面を整理する |
| 行政・消防等との確認 | 自分で相談時の前提と回答を記録し、工程へ反映する | 依頼範囲に応じて協議・提出・補正を支援する。建築・消防の専門判断は別途関係者と分ける |
| 運営体制 | 入退室、清掃、ゴミ、駆けつけ等を自分で決め、申請資料と合わせる | 顧客側で決める事項を残しつつ、申請準備に必要な情報を整理する |
| 手戻りへの対応 | 変更・不足が判明したとき、原因と修正範囲を自分で切り分ける | 依頼範囲に応じて、資料・工程・相談先を整理する。ただし行政判断や費用を保証しない |
自力で進める場合も、工事契約・着工・設備発注の前に、図面と行政・消防の確認をそろえることが重要です。契約前から開業までの確認順は、次の全体工程の記事で確認できます。
契約・着工後に発覚する手戻りは、費用表の外に出やすい
自力申請からの相談では、判読しにくい手書き図面、面積区分の未整理、書類不足、消防の相談・手続漏れなどが見つかることがあります。これは不備率や全国共通の傾向を示すものではなく、自社が相談を受けた案件で確認された例です。
特に、物件契約後や工事開始後に制度・図面・設備・運営体制の前提が変わると、追加費用だけでなく、工事停止、再設計、行政・消防との再確認、空家賃などが重なることがあります。図面の作成と現況一致の詳細は、次の記事で確認してください。
現地検査での指摘と補正の詳細は、次の記事で確認してください。本記事では、それらが総費用へ及ぼす影響だけを扱います。
前提:渋谷区の3階建て戸建てで、2026年改正前の基準を前提に旅館業申請を提出・受理した後、二段ベッドへの変更、2LDKから1LDKへの間取り変更、浴室をシャワー室2か所・洗面2か所へ変更する案が進みました。
本件の口頭協議:管轄行政との口頭協議では、間取り・水回りを変更した状態では新たな申請として扱われる可能性がある旨の説明を受けました。これは本件の変更内容・時点を前提とする口頭協議であり、渋谷区全体や他自治体の一般ルールではありません。
見込みの影響:申請図面どおりに戻す再工事と、消防に関する手続・工事を進める方針です。
- 開業の遅延:3〜4か月の見込み
- 空家賃を含む直接追加負担:約890万〜920万円の見込み
- 上記のうち追加工事:約800万円の見込み
いずれも現在進行中の一案件の見込みであり、確定損失でも、申請変更の一般的な費用・期間でもありません。
再発防止:壁、部屋数、ベッド、定員、水回り、設備、消防計画に関わる変更案は、工事契約・着工前に関係者と確認します。
申請後の変更管理、渋谷区の改正と経過措置、本件の詳しい対応は次の記事で確認してください。
見積もり前に、総費用を確認する順番
- 制度と物件の前提を確認する:届出・許可・認定の候補、所在地、権利関係、現況図面、予定する営業方法をそろえる。
- 工事・消防・運営の変更点を書き出す:間取り、設備、定員、運営体制、周知の要否を確認し、前提が未確定の発注を止める。
- 費用を8つの箱へ分ける:行政手数料、報酬、図面、消防、建築・工事、周知、運営、実費・手戻りを別々に見積もる。
- 依頼範囲と顧客側の担当を決める:誰が行政・消防への確認、資料収集、運営体制の決定、工事発注を担うかを明確にする。
まだ物件契約前で、制度の成立可能性や大きな工事の要否から確認したい場合は、費用見積の前に契約前から開業までの確認順を整理してください。詳しい工程は次の記事で確認できます。
まとめ:報酬額ではなく、確認不足で増える総額まで比べる
民泊・旅館業の申請・開業費用は、行政手数料、行政書士報酬、図面、消防、工事、周知、運営体制、実費と手戻りを分けて初めて比較できます。自力申請か依頼かは、誰が何を確認し、未確定の契約・工事を止められるかまで含めて選びましょう。
住宅宿泊事業と旅館業の制度別報酬、契約前から開業までの全体工程、申請後変更による手戻りは、本文中で案内した各記事から確認できます。許可・届出受理・行政判断・開業日・費用の確定を保証するものではありません。
参考にした公的一次情報
著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。
