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行政書士
図面がない古民家や中古物件でも、資料収集と現地実測により現況図を作成し、民泊・旅館業の手続を検討できる場合があります。最初から「図面がないから無理」と決める必要はありません。
ただし、現況図は現在の間取りや設備を表す図面です。建築時の確認内容や、増築・改修を含む建物全体の適法性を証明するものではありません。申請図面を作る作業と、既存建物の適法性を調べる作業を分けることが大切です。
この記事では、図面がない物件で最初に探す資料、現況図を作る順番、専門家へ切り替える境界を整理します。
- 売主・所有者・管理会社と行政窓口の両方で資料を探す
- 現況図は、使う範囲を決めてから実測・清書する
- 資料と現況が合わない場合は、図面作成だけで進めず建築士調査へ切り替える
図面がなくても、まずは現況図を作れるか確認する
古い建物では、建築時の図面が所有者の手元に残っていないことがあります。この場合は、既存資料で建物の概要を押さえ、現地で各部を測り、現在の状態を表す「現況図」を作る方法を検討します。
現況図は現在の建物状態を表す図面
現況図には、現在の部屋配置、寸法、出入口、窓、階段、水回り設備などを反映します。民泊・旅館業の申請では、宿泊に使う範囲や客室面積、設備、避難経路等を確認するため、現在の建物状態を正しく示す図面が必要です。
住宅宿泊事業の届出では、観光庁の案内上、各設備の位置、間取りと入口、各階、居室・宿泊室・宿泊者が使用する部分の床面積を示す住宅の図面が添付書類とされています。必要事項が明確なら手書き図面でもよいとする国のガイドラインがありますが、縮尺や記載事項などの運用は届出先へ事前に確認してください。
旅館業許可で必要な図面の種類と記載内容は、自治体や施設計画によって異なります。平面図だけでなく、配置図、各階の設備、面積表、求積図、立面図などを求められる場合があるため、作図を始める前に申請先の案内と事前相談で確認します。
現況図は建築時の図面や適法性の証明ではない
実測して現況図を作っても、それだけで現在の建物が建築基準法に適合していると確認できるわけではありません。現況図は「今どうなっているか」を示しますが、「いつ、どのような確認を受けて建てられたか」「増築や改修が適切に行われたか」までは証明しないからです。
現況図が完成したことを、建物の適法性確認が終わったことと混同しないでください。確認済証・検査済証の記録がない、登記面積と現況が違う、未登記の増築が疑われる場合は、現況図作成とは別に建築士による調査が必要になることがあります。
検査済証がない場合の資料の見方、台帳記載事項証明、未登記増築、現況との照合は、次の記事で詳しく解説します。
現地を測る前に、残っている建築資料を集める
図面が見当たらないときも、すぐに建物全体を測り始めるのではなく、まず関係者と行政窓口に残る資料を確認します。既存資料が一部でも見つかれば、測定漏れを減らし、建物の変化にも気づきやすくなります。
売主・所有者・管理会社等へ確認する資料
- 建築時又は改修時の平面図、配置図、立面図、設備図
- 確認済証、検査済証、確認申請書の副本
- 増築、リフォーム、用途変更の図面と工事記録
- 売買・賃貸募集時の間取り図、建物パンフレット
- 土地・建物の登記事項証明書、公図、地積測量図等
不動産広告の間取り図は現況確認の手掛かりになりますが、申請用図面としてそのまま使える精度や記載内容があるとは限りません。登記事項証明書も所在、構造、床面積等を確認する資料ですが、各室の寸法や間取りを示す建築図面ではありません。
行政窓口で確認できる記録も調べる
自治体によっては、建築計画概要書、台帳記載事項証明、指定道路図等を閲覧又は取得できる場合があります。保管状況と取得方法は自治体や建築時期により異なるため、所在地を管轄する建築担当窓口へ確認します。
行政に記録があっても、現在の建物と一致するとは限りません。資料収集の目的は、現況図を描くためだけでなく、資料上の建物と現地の差を発見することにもあります。
図面がない物件で現況図を作る流れ
現況図は、測る前の準備で精度が大きく変わります。民泊・旅館業で使う範囲と、申請先が必要とする記載を先に整理してから現地調査へ進みます。
住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業のどれを検討するか、建物のどの階・部屋を宿泊者が使うかを整理します。
建築時、改修時、登記、行政台帳等の資料を集め、現地で重点的に確認する箇所を決めます。
各室の縦横、天井高、壁厚、窓・扉、廊下・階段、水回り設備、建物外周など、申請に必要な箇所を測定します。
間取り変更、増築、用途の変更、設備の移設、面積差がないかを確認し、写真とメモを残します。
実測値を反映し、室名、寸法、面積、設備、宿泊者の利用範囲、避難経路等を申請先の要領に合わせて記載します。
保健所、建築担当部署、消防署等へ必要な記載と前提を確認し、指摘があれば計画と図面を修正します。
現地実測では部屋の縦横だけを測らない
客室面積を出すだけなら部屋の縦横に目が向きますが、申請では設備や安全確認にも図面を使います。窓・扉の位置と大きさ、階段・廊下の幅、天井高、水回り、火気使用設備、避難経路、建物外周と敷地内の位置関係など、計画に応じた測定が必要です。
古民家では壁が直角でない、増築部との境界が分かりにくい、床や天井に段差があるといったこともあります。複雑な形状を一方向から測るだけでは誤差が積み重なるため、対角寸法や外周寸法でも照合します。
清書後は面積と現地の整合を確認する
CAD等で整った図面を作っても、元の測定が違えば申請図面としての信頼性は上がりません。各室面積と床面積の集計、外周寸法、階ごとの上下関係、階段や開口部の位置を再確認します。
申請用図面で求められる記載事項や、行政が図面のどこを確認するかは、次の記事で解説しています。
現況図だけで進めず、建築士調査へ切り替える場面
図面がないこと自体は、現況図作成で対応できる場合があります。しかし、調査中に次の状況が見つかったときは、申請図面の作成だけで進めず、建築士による確認へ切り替えます。
- 登記や行政記録より、現況の床面積が大きい
- 増築したように見える部分があるが、工事記録がない
- 確認済証・検査済証の記録と現在の用途・間取りが合わない
- 連棟建物、複数棟、用途の異なる部分が混在している
- 耐震、防火、構造に関わる壁や階段が改修されている可能性がある
- 旅館業への用途変更や建築関係書類の提出を求められる
これらは、現況図を詳しく描けば解消するとは限りません。過去の資料、建築時期、工事履歴、現在の構造、適用される規定を建築士と確認し、必要に応じて行政協議や改善案の検討へ進みます。
図面がない物件を契約する前のチェック項目
現況図は契約後でも作れますが、調査で大きな差異が見つかった場合、契約済みでは選択肢が限られます。候補物件の段階で、少なくとも次の点を確認してください。
- 所有者や管理会社へ、建築時・改修時の資料を照会したか
- 行政に確認済証・検査済証、建築計画概要書等の記録があるか
- 登記面積、募集図面、現況の外形に大きな違いがないか
- 宿泊者が使う階・部屋・設備を決めているか
- 図面作成、建築士調査、改修の費用と期間を契約判断に含めたか
- 調査結果を確認する前に、無条件で工事を発注していないか
「図面なし」と言われても、行政記録や過去の改修資料まで本当に存在しないとは限りません。測量を発注する前に、誰へ何を確認したかを一覧にすると、重複作業と取りこぼしを減らせます。
図面がない物件についてよくある質問
不動産会社の間取り図を申請に使えますか?
参考資料にはなりますが、そのまま申請に使えるとは限りません。寸法、縮尺、面積、設備、宿泊者の利用範囲など、申請先が求める情報が不足していることが多いため、現況と照合して必要な図面を作ります。
自分で測って手書きすればよいですか?
住宅宿泊事業の国のガイドラインでは、必要事項が明確なら手書きの図面でもよいとされています。ただし、申請制度、自治体、建物の規模や複雑さにより求められる精度・記載は異なります。旅館業や複雑な建物は、申請前に専門家と提出先へ確認してください。
現況図を作れば、検査済証がなくても問題ありませんか?
現況図と検査済証は役割が異なります。現況図は現在の建物状態を示すもので、検査済証の代わりにはなりません。検査済証がない場合にどの資料と調査が必要かは、建物条件と自治体運用を踏まえて別に判断します。
まとめ|図面作成と建物調査を分けて進める
図面がない古民家・中古物件でも、残っている資料を集め、現地を実測して現況図を作ることで、民泊・旅館業の手続を検討できる場合があります。
一方、現況図は建物の適法性を証明するものではありません。資料と現況の不一致、増築、用途変更、確認済証・検査済証の不足がある場合は、建築士調査へ切り替えてください。
民泊GOでは、候補物件の無料チェックを年間500件以上実施しています。行政書士が一次確認し、図面作成や建築面の精査が必要な案件では、連携建築士と確認します。
参考にした一次情報
著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。

