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行政書士
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに定期報告を行います。期限は、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日です。対象になるのは、直前2か月分の実績です。報告する項目は、宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳の4つです。
宿泊実績が0日であっても報告は必要です。誤って報告した場合、現行のシステム上は期限内であれば修正できる場合があります。期限後や修正できない場合は、届出先の自治体へ連絡して必要な手続を確認します。
この報告は、住宅宿泊事業法第14条と同法施行規則第12条に基づく法令上の義務です。根拠と項目は、観光庁の住宅宿泊事業法・施行規則等の関係法令資料(2026年8月31日確認)に示されています。
最初に押さえるのは、次の3点です。
- 期限は偶数月の15日で、対象は直前の2か月間である
- 報告するのは4項目で、それぞれ数え方が違う
- 実務を管理会社へ委託しても、法令上の報告義務者は住宅宿泊事業者である
この記事では、年間の期限カレンダー、4項目の集計方法、0日の扱い、予約データからの数字の作り方、民泊制度運営システム(定期報告をオンラインで提出するための国のシステム)での提出、管理会社との役割分担、誤報告や期限後の対応までを順に説明します。読み終えると、自分の次回報告の対象期間と期限を特定でき、数字を自己判断で作らずに提出まで進められます。
1泊・連泊・年度またぎといった日数そのものの数え方は、次の記事で確認してください。定期報告の宿泊日数も、この数え方で集計します。
期限が近い、あるいは前回までの報告に不安が残る場合は、報告内容を確定する前にご相談ください。今回の対象期間の特定、4項目の集計方法、過去の報告内容の確認までを一度に整理できます。
定期報告の期限と対象期間をカレンダーで確認する
最初に決めるのは、「いつまでに」「どの期間の」数字を出すかです。ここを取り違えると、正しく集計しても対象期間が合わないまま提出することになります。
4・5月分は6月15日まで、以後2か月ごと
報告は2か月ごとで、期限は偶数月の15日です。1年分の6区分を、対象期間の暦順に並べると次のとおりです。4月・5月分であれば、期限は6月15日です。
| 対象期間 | 報告期限 |
|---|---|
| 12月・1月 | 2月15日 |
| 2月・3月 | 4月15日 |
| 4月・5月 | 6月15日 |
| 6月・7月 | 8月15日 |
| 8月・9月 | 10月15日 |
| 10月・11月 | 12月15日 |

期限と対象期間の基本は、観光庁の住宅宿泊事業法に関するFAQ(2026年8月31日確認)に記載があります。
なお、期限日が土日祝日などの閉庁日に当たる場合の取扱いは、本記事では断定しません。提出方法や届出先によって案内が異なる可能性があるため、期限が迫っている場合は、システムの案内と届出先自治体の案内を確認してください。実務上は、閉庁日の扱いを調べる時間を使うより、前倒しで提出するほうが確実です。
届出住宅ごと・届出番号ごとに報告する
報告の単位は事業者ではなく、届出住宅です。届出住宅が3件あれば、報告も3件分を作ります。1件にまとめて合計値を出す形ではありません。
届出番号は、届出住宅ごとに割り当てられた番号です。予約管理システムの物件IDや部屋番号とは別のもので、この記事で扱う集計や管理表はすべて届出番号を鍵にします。
したがって、集計表も届出番号ごとに分けます。予約管理や清掃の管理単位が届出住宅と一致していない場合は、報告の前に届出番号へひも付け直す作業が必要です。
どこまでを一つの届出住宅として扱うか、複数住戸や複数棟がある場合の単位の判断は、次の記事で整理しています。
報告する4項目を同じ数字にしない
報告する項目は、人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳の4つです。この4つは連動しますが、同じ数字ではありません。
ご相談でよく見られるのは、予約件数や人数を1か所で数え、それを4項目へ流用してしまう集計です。まず、4項目の違いを一覧で押さえます。
| 項目 | 数える対象 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 宿泊日数 | 届出住宅に人を宿泊させた日の数 | 同じ日に複数組が泊まっても1日 |
| 宿泊者数 | 期間内に宿泊した人の数 | 連泊を泊数分だけ重ねて数えてしまう |
| 延べ宿泊者数 | 各日の宿泊者数の期間内合計 | 宿泊者数と同じ値を入れてしまう |
| 国籍別の宿泊者数内訳 | 宿泊者数の国籍別の内訳 | 合計が宿泊者数と合わない |

届出住宅に人を宿泊させた日数
宿泊日数は、その届出住宅に人を宿泊させた日の数です。同じ日に複数の宿泊者グループが泊まっても、日数は1日です。人数や組数で日数が増えるわけではありません。
定期報告の宿泊日数は、年間180日の集計と同じ数え方で作ります。そのため、1年間の起算が4月1日正午である点や、正午から24時間を1日として数える考え方も、そのまま当てはまります。正午をまたぐ滞在をどう数えるかの具体例は、日数計算の記事で確認してください。
宿泊者数
宿泊者数は、期間内に宿泊した人の数です。観光庁が示す例では、同一人物が連続して宿泊した場合は1人と数え、連続しない日にあらためて宿泊した場合はそれぞれ1人と数えます。
つまり、3泊した1人の宿泊者は3人ではなく1人です。一方、同じ人が月初と月末に別々に宿泊した場合は、2人として数えます。予約管理システムの「延べ予約人数」をそのまま転記すると、この区別が失われます。
項目ごとの考え方は、観光庁の定期報告のページ(2026年8月31日確認)と、前掲の定期報告に関する案内資料(2026年8月31日確認)に示されています。
延べ宿泊者数
延べ宿泊者数は、各日に宿泊していた人数を、報告対象期間内で合計した数です。2人が3泊すれば、延べ宿泊者数は6です。
宿泊者数と延べ宿泊者数の差は、連泊の比率で決まります。1泊利用だけの期間は両者が近づき、連泊が中心の施設では大きく開きます。自社の連泊比率から見て差が小さすぎる場合は、集計方法を取り違えている可能性があります。
国籍別の宿泊者数内訳
国籍別の内訳は、宿泊者数を国籍で分けたものです。内訳の合計は宿泊者数と一致します。
入力できる国籍の区分は民泊制度運営システムの分類に従います。また、日本国内に住所を有する外国人をどの区分で扱うかは、システムの入力区分と公式の案内で確認したうえで統一してください。ここを担当者ごとの判断で入力すると、期間をまたいで数字の基準がぶれます。
国籍の情報は宿泊者名簿の記載事項から集計します。名簿の記録が不十分だと、報告時に内訳を作れません。報告のためだけに後から推測で埋めることはできないため、記録の入口である名簿の運用を先に整えてください。
宿泊実績0日でも報告する
「営業していないのだから報告も不要」という理解は、ご相談でも繰り返し伺う誤解です。宿泊がなかった期間も、0として報告します。
開業前・休止中・宿泊者がいなかった期間
届出は済ませたが営業を始めていない期間、季節的に休止している期間、予約が入らなかった期間のいずれも、報告の対象です。4項目を0として提出します。この取扱いは、観光庁の定期報告に関する案内資料(2026年8月31日確認)で示されています。
0日の報告は、入力する数値が少なく、作業そのものは簡単です。負担が小さい一方、提出しなければ「未提出」として扱われる点は実績がある場合と変わりません。休止中こそ、期限をカレンダーへ固定しておいてください。
廃止届が受理されるまでの報告
事業をやめる意思を固めていても、廃止の届出が受理されるまでの間は報告の対象になります。大阪市は、廃止届が受理されるまでは定期報告が必要である旨を、住宅宿泊事業の定期報告に関するページ(2026年8月31日確認)で案内しています。
これは自治体の公式な運用例として示すものです。廃止手続の細部や必要書類は届出先によって異なるため、全国共通の詳細な運用として読み替えないでください。自分の届出先の案内を確認したうえで、廃止届が受理された日を記録に残します。
旅館業・特区民泊へ切り替えた後も住宅宿泊事業が自動廃業するとは限らない
同じ物件で旅館業の許可や特区民泊の認定を取得した場合でも、それによって住宅宿泊事業の届出が自動的になくなるとは限りません。大阪市は、制度が重複する場合の取扱いについて、前掲の大阪市のページ(2026年8月31日確認)で案内しています。
切替の時期は、報告漏れが起きやすい局面です。新制度での開業準備に意識が向き、住宅宿泊事業側の届出と報告が宙に浮いたまま期限を迎えるためです。切替を決めた時点で、住宅宿泊事業の廃止手続と、それまでの報告義務をあわせて整理してください。
住宅宿泊事業から旅館業への具体的な切替工程は、別の記事で扱います(公開後にリンクを掲載します)。それまでの間は、住宅宿泊事業側の廃止手続と報告の要否を、届出先自治体の案内で確認してください。
OTA・自社予約・宿泊者名簿から数字を作る
ここまでは、期限と報告項目という制度側の内容を確認しました。ここからは、その項目に入れる数字をどう作るかという実務の話に移ります。
報告でつまずく原因の多くは、法令の理解ではなく、数字の作り方にあります。予約が複数の経路に分かれ、実泊の確定情報が別の場所にあるためです。全体の流れは、次の5段階になります。以降のH2は、この流れを順に細かく見ていく構成です。
届出番号ごとに全予約経路を集約する
複数のOTAを使っている場合、経路ごとの集計をそのまま足しても、届出住宅単位の数字にはなりません。二重計上や計上漏れが起きるためです。
予約1件ごとに届出番号を付し、届出住宅単位で並べ直します。自社サイト経由や電話での直接予約も、同じ表へ入れます。宿泊者名簿は、実際に誰が宿泊したかを確認する基礎資料として突合に使います。
予約済みではなく実泊・変更・キャンセルを確定する
報告するのは実績であり、予約の状態ではありません。予約が入っていた日でも、直前キャンセルで宿泊がなければ宿泊日数には入りません。
日程変更、人数変更、途中退室、ノーショーは、締めの時点で確定させます。予約一覧を出力した日によって数字が動くため、「いつ時点のデータか」を記録に残してください。
4項目を作成者と確認者の二段階で照合する
集計した人がそのまま提出すると、転記ミスに気づけません。作成者と確認者を分け、少なくとも次の点を照合します。
- 宿泊者数と延べ宿泊者数が同じ値になっていないか
- 国籍別内訳の合計が宿泊者数と一致しているか
- 宿泊日数が、同一日の複数組を重複して数えていないか
- 対象期間が、今回の報告区分と一致しているか
なお、住宅宿泊仲介業者などから提供される営業日数の情報が行政側へ報告され、事業者の報告内容との照合に用いられ得ます。根拠は、観光庁の住宅宿泊仲介業者向けの業務に関するページ(2026年8月31日確認)です。
つまり、自社の集計だけが数字の出どころではありません。掲載を取り下げた経路や、途中で解約したOTAの実績も含め、全経路を対象に突合しておく必要があります。
突合の基礎になる原記録を、どの単位でどこまで残しておくかは、日数計算の記事で扱っています。集計をやり直すことになった場合に、記録が残っているかどうかで作業量が変わります。
民泊制度運営システムで提出する
提出は、民泊制度運営システムから行います。定期報告をオンラインで提出するための国のシステムで、利用の準備や画面の操作は公式マニュアルの案内に従います。施設数と運用体制によって、直接入力とCSVアップロードを選びます。
少数施設は画面へ直接入力する
届出住宅が1〜数件であれば、画面へ直接入力する方法が確実です。入力項目が画面上に並ぶため、4項目の対応関係を確認しながら進められます。
入力の前に、届出番号と報告対象期間を手元の集計表と照らし合わせてください。システム上で複数の届出住宅を扱う場合、対象を選び違えたまま入力を進めると、正しい数字が別の施設へ入ります。
複数施設はCSVアップロードを検討する
施設数が多い場合は、CSVによる一括登録を検討します。手入力の回数が減り、転記ミスも減らせます。
一方で、CSVは形式が合わないと取り込めません。列の並び、コード、桁の扱いは、公式に示されている形式に合わせます。提出方法とデータ形式は、観光庁の定期報告のページ(2026年8月31日確認)に示されています。
自社の管理表をCSVの形式に合わせて設計しておくと、毎回の変換作業がなくなります。初回だけ手間をかけ、2回目以降は同じ手順で回せる形にしてください。
完了画面・通知・提出データを証跡として保存する
提出後は、完了画面、システムからの通知、提出したデータの3つを保存します。後日、行政から照会を受けた際に、いつ何を提出したかを自分で示せる状態にしておくためです。
操作の詳細な手順は、観光庁の民泊制度運営システムの操作手順書(2026年8月31日確認)で確認してください。本記事では画面手順を転載しません。システムは更新されるため、操作は常に最新の公式マニュアルにあたるのが確実です。
管理会社へ委託しても役割を曖昧にしない
ここまでは、自社で数字を作って提出する前提で説明しました。ここからは、実務を管理会社へ委託している場合の整理です。
管理業務を住宅宿泊管理業者へ委託している場合でも、報告の責任が移るわけではありません。役割が明確でないまま運用されている例は、ご相談でも見られます。
法令上の報告義務者は住宅宿泊事業者
定期報告の義務を負うのは住宅宿泊事業者です。管理会社は実務を代行できますが、法令上の義務者が管理会社に変わるわけではありません。
住宅宿泊事業者の責務と、管理業務の委託にあたって整理すべき事項は、観光庁の住宅宿泊事業者の責務に関するページ(2026年8月31日確認)に整理されています。大阪市も、前掲のページで法令上の義務者を明示しています。
したがって、「管理会社がやっているはずだ」という状態は、事業者側にとってリスクの高い運用です。代行しているかどうかではなく、事業者として提出結果を確認できているかが分かれ目になります。
管理会社から必要情報を受け取る契約・締め日を決める
報告に必要な数字は、管理会社側の予約管理と宿泊者名簿に集まります。そこで、委託契約または覚書で、次の点を決めておきます。
- どの情報を(4項目の元データ、予約一覧、宿泊者名簿の集計)
- いつまでに(毎月の締め日、報告月の提出何日前まで)
- どの形式で(システムのCSV形式に合わせた列構成)
- 誰が受け取るか(事業者側の受領担当)
締め日を決めていないと、期限直前に数字が届き、確認の時間が取れません。報告期限の前月中に数字が揃う設計にしておくと、差異があっても照会し直せます。
通知受信者・集計者・確認者・提出者を一枚の役割表にする
役割は口頭で決めず、表にして共有します。人が入れ替わっても運用が続く形にするためです。
| 役割 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 通知受信者 | 事業者側で指定 | システム通知・行政からの連絡を受け取る |
| 集計者 | 管理会社または事業者 | 全経路の突合と4項目の作成 |
| 確認者 | 事業者側で指定 | 集計結果の照合と対象期間の確認 |
| 提出者 | 事業者側で指定 | システムでの提出と証跡の保存 |
| 最終責任者 | 住宅宿泊事業者 | 法令上の報告義務を負う |

通知の受信先を管理会社のみに設定していると、行政からの照会に事業者が気づけません。少なくとも通知受信者と最終責任者は、事業者側に置いてください。
間違えた・期限を過ぎた・長期間未提出の場合
ここからは、すでに問題が起きている場合の対応です。判断を誤ると、単純な報告漏れが行政対応の案件に変わります。
期限内の修正は現行システム操作手順に従う
提出後に誤りに気づいた場合、まず現行の操作手順書を確認します。2025年に更新された民泊制度運営システムの操作手順書(2026年8月31日確認)では、報告期間の翌月15日までの修正が案内されています。
過去に公開された案内の中には、提出後は事業者が修正できないとするものもあります。取扱いは更新されているため、修正の可否は必ず現行のマニュアルとシステムの画面表示で確認してください。
期限後またはシステムで修正できない場合は自治体へ連絡する
修正できる期間を過ぎている場合や、システム上で修正操作ができない場合は、届出先の自治体へ連絡します。これは自治体の運用にかかわらず、共通の初動です。
やってはいけない対応:誤った数字を別の報告期間へ付け替える、上書きのために実態と異なるデータを作る、気づかなかったことにして次回分だけ正しく出す。いずれも記録の整合性を自ら壊す行為であり、後の説明を難しくします。
連絡の際は、次の情報を整理してから行います。口頭で経緯を説明するより、事実関係を並べたほうが手続の案内を受けやすくなります。
- 届出番号と届出住宅
- 誤りのあった報告期間
- 何がどう誤っていたか
- 元になる記録(予約一覧、宿泊者名簿の集計)
- 正しいと考えられる数値と、その根拠
正しい数値を自分で確定できない場合も、その状態のまま相談して構いません。数字を無理に作ってから連絡すると、後で訂正すべき内容が増えます。
未提出への措置は自治体運用と手続段階を分ける
期限後の取扱いは、届出先の自治体によって運用が異なります。全国一律に「遅れたら直ちに営業停止」となるわけではありません。
一方で、対応を厳格化している自治体もあります。京都市は、定期報告義務違反に対する指導期間を短縮し、2026年2月から改善命令、過料、業務停止命令、公表を速やかに実施する方針を公式ページ(2026年8月31日確認)で公表しています。
これは京都市の運用例です。他の自治体の運用や、個別案件の結論をこの内容から推測することはできません。自分の届出先がどの段階でどう対応するかは、公表資料と窓口の案内で確認してください。
未提出や誤報告に気づいた段階では、一般的な操作説明だけで完結しないことが大半です。状況を整理してから連絡したい場合は、次からご相談ください。
実務事例から分かる再発防止
当事務所で扱った匿名の個別案件から、報告に関する3つの局面を紹介します。いずれも自治体名と物件が特定されないよう匿名化しており、行政文書を保有していない範囲を含みます。結果を一般的な処分基準として読み替えないでください。
報告数値とOTA側の数値の不一致から照会を受けた例
よくある判断:主要なOTA1社の管理画面から出力した実績を、そのまま報告数値として提出していました。
見落とし:他の経路からの予約と直接予約が集計に含まれておらず、届出住宅単位の実績になっていませんでした。仲介側の情報と自社の報告に差が生じ得るという前提が抜けていました。
事業への影響:数値の不一致について行政から照会を受け、予約の受付をいったん停止したうえで、記録の再集計と事実関係の説明を行い、以後の集計方法を改める対応が必要になりました。営業判断より、記録の整理と説明に時間を割く期間が生じました。
回避方法:報告の元データを1経路の出力に依存させないことです。届出番号を鍵に全経路を突合し、作成者と確認者を分けたうえで提出します。
相談時期:照会を受けた直後です。数字を作り直す前に相談したほうが、説明の一貫性を保てます。
この案件は行政文書を保有していない範囲を含む個別事例であり、誠実に対応すれば処分を回避できることを示すものではありません。また、特定の自治体の運用を示すものでもありません。
180日未満でも照会・指導を放置して重大化した例
よくある判断:年間の営業日数が180日に達していないため、報告に関する照会も重大な問題ではないと考えていました。
見落とし:日数の上限を超えているかどうかと、報告義務を果たしているかどうかは別の問題です。行政からの照会と改善指導に応答しない状態が続くこと自体が、手続の段階を進める要因になり得ます。
事業への影響:対応の遅れが重なった結果、営業を停止する期間が生じました。本件は当事務所が行政文書を保有していない匿名の個別案件であり、停止の期間や手続の名称を一般化できるものではありません。
回避方法:照会や指導の文書は、内容の軽重を自己判断せず、受領日と期限を記録して期限内に応答します。不足している資料があっても、その旨を含めて期限内に返すことが重要です。
相談時期:最初の照会文書を受け取った時点です。
日数の上限を超えそうな場合や超えてしまった場合の初動は、別の記事で扱っています。報告の遅れとは対応の順序が異なります。
命令中に営業を続けた相談を受任しなかった例
よくある判断:行政から命令を受けた後も、既存予約の消化までは営業を続けてよいと考えていました。
見落とし:命令が出ている状態と、通常の指導を受けている状態は、手続の段階が異なります。営業を継続したまま是正だけを外部に依頼しても、状況の整理が進みません。
事業への影響:当事務所は、営業を継続したままの状態でのご相談を受任しませんでした。これは当事務所の個別の判断であり、命令違反の法的効果をこの事例から述べるものではありません。
回避方法:命令や指導を受けた場合、まず文書の内容と対象範囲を確認し、求められている措置を先に確定させます。営業判断はその後です。
相談時期:命令や指導を受けた直後、営業の継続を判断する前です。
届出番号別の月次締めと複数施設管理表
3つの事例に共通するのは、いずれも期限直前の作業だけでは防げなかった点です。ここからは、平常時の運用に戻して、報告を安定させる仕組みを整理します。
報告を安定させる方法は、期限直前の作業を丁寧にすることではありません。毎月締めておくことです。
報告期限より前に毎月締める
2か月分をまとめて期限直前に集計すると、記憶と記録が薄れた状態で確認することになります。毎月末に締めておけば、確認するのは直近1か月分だけです。
締めの作業は、予約一覧の出力、実泊の確定、4項目の集計、差異の確認の4つです。0日の月も、0であることを確認して記録に残します。
提出・訂正・行政連絡の履歴を残す
管理表には、実績だけでなく手続の履歴も持たせます。列の構成は次のとおりです。
| 届出番号 | 報告期間 | 宿泊日数 | 宿泊者数 | 延べ宿泊者数 | 提出日 | 訂正の有無 | 行政連絡 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| (番号A) | 4月・5月 | 12 | 20 | 41 | 6月8日 | なし | なし |
| (番号B) | 4月・5月 | 0 | 0 | 0 | 6月8日 | なし | なし |
国籍別内訳は列が増えるため、別シートに分けて管理し、合計が宿泊者数と一致するかだけを本表で確認する形が扱いやすくなります。
事業譲渡時は過去報告も取得前に確認する
運営中の民泊を取得する場合は、当該年度の残日数だけでなく、過去の定期報告が期限どおり提出されているかを取得前に確認してください。詳しい調査項目は、事業譲渡を扱う記事で整理します(公開後にリンクを掲載します)。それまでは、届出番号ごとの提出履歴と訂正の有無を売主から提示してもらう形で確認します。
自分で報告できるケースと相談した方がよいケース
すべてを専門家へ依頼する必要はありません。公式の案内で完結する場合と、個別に整理したほうがよい場合を分けます。
通常の0日・単一施設・数字一致は公式案内で対応
届出住宅が1件で、記録が揃っており、集計した4項目に矛盾がない場合、報告は公式の案内とマニュアルで完了できます。0日のみの報告も同じです。
この範囲であれば、月次で締める運用を作り、提出後の証跡を保存しておけば十分です。毎回同じ手順で回せる形にすることが、最大の再発防止になります。
記録不一致・過去未提出・行政照会・複数施設・切替併存は早めに相談
一方、次の状況は、操作方法の確認だけでは解決しません。
- 経路ごとの記録が一致せず、正しい数値を確定できない
- 過去の報告期間に未提出がある
- 行政から照会や指導の文書を受け取っている
- 複数施設の履歴を届出番号ごとに補正する必要がある
- 旅館業や特区民泊への切替と住宅宿泊事業の届出が併存している
これらは、数字の確定と行政への説明を同時に進める必要があります。自己判断で数字を上書きした後では、説明できる内容が減ります。
まとめ・次の行動
- 期限は偶数月の15日で、対象は直前2か月間。報告は届出住宅ごとに行う
- 報告する4項目は数え方が異なり、宿泊者数と延べ宿泊者数は同じ値にならない
- 宿泊実績が0日でも報告が必要で、廃止届が受理されるまでの取扱いは届出先で確認する
- 数字は届出番号を鍵に全経路を突合し、作成者と確認者を分けて確定する
- 実務を管理会社へ委託しても、法令上の報告義務者は住宅宿泊事業者である
- 誤りは現行マニュアルで修正可否を確認し、期限後や修正できない場合は届出先へ連絡する
- 期限後の対応は自治体ごとに運用が異なり、全国一律の処分フローとしては読み替えない
180日制限の全体像から確認したい場合は、180日制限の基本を解説した記事をご覧ください。
ご相談では、次の点を整理してお伝えします。
- 次回の報告対象期間と期限
- 日数と4項目の集計方法
- 過去の報告内容と、訂正の可否
- 行政照会への説明と、改善内容の整理
- 複数施設の管理方法
- 制度切替と報告義務の関係
お手元にあると確認が早い資料は、次のとおりです。
- 届出番号
- 予約一覧
- 宿泊者名簿の集計
- 過去の報告内容
- 行政から受け取った文書
- 管理委託契約書
資料がそろっていなくても、届出番号、報告期間、現在分かっている状況だけで初回のご相談は可能です。不足している資料の取得方法もあわせてご案内します。
次回報告の期限と、数字の作り方を一緒に確定させます。
なお、定期報告に関する支援は当事務所で受任できる業務の一つであり、対応の方法、頻度、料金、責任の分界は受任時に個別にお示しします。ご相談は、行政上の結果を保証するものではありません。
施設や運営体制を変えるときは、定期報告とは別に確認する
変更届・廃業届・営業者の引継ぎは、制度と変更内容によって手続きが分かれます。変更前に必要な確認と制度別の進め方を、次の記事にまとめています。
著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。

