新宿区の物件で住宅宿泊事業(民泊新法)を検討する段階で、「予約サイトに何曜日の何時から何時までを出せるのか」というご相談をいただきます。
新宿区の住居専用地域では、月曜日の正午から金曜日の正午まで住宅宿泊事業を実施できません。したがって、基本の営業可能時間は金曜日正午から月曜日正午です。住居専用地域以外にはこの区条例の曜日制限はありませんが、全国共通の年間180日上限や届出要件は残ります。
結論が変わる主な条件は、物件の正確な住所と用途地域です。同じ新宿区内でも、住居専用地域かどうかで販売できる曜日が大きく変わります。
ここを確認せずに賃貸借契約や内装工事へ進むと、想定していた平日の売上が立たず、収支計画と制度選択をやり直すことになります。すでに賃料や工事費が動いている段階では、選べる手段は契約前より狭くなります。
この記事では、正午を境とする曜日制限の読み方、予約枠への落とし込み、住居専用地域以外との違い、年間営業日数を概算するときの注意点、収支試算の入力項目を整理します。読み終えると、候補物件の住所を前提に予約枠と収支の前提を組み立てられます。
なお、本文で参照した公式情報はいずれも2026年8月27日に確認したものです。
住居専用地域は月曜正午から金曜正午まで営業できない
新宿区は、住宅宿泊事業法18条に基づく条例で、住居専用地域における実施期間を制限しています。制限の内容は、新宿区「住宅宿泊事業と新宿区のルール」および区が公開する「住宅宿泊事業実施の区域と期間の制限」で確認できます。
制限は日単位ではなく、正午を境とする時刻で区切られています。1週間を横に並べると、次のようになります。
| 時間帯 | 住居専用地域での住宅宿泊事業 |
|---|---|
| 月曜正午 → 金曜正午 | 実施できない |
| 金曜正午 → 月曜正午 | 実施できる(全国共通の年間180日上限の範囲内) |
つまり、営業可能な時間帯は金曜日の正午から月曜日の正午までの連続した区間です。年間180日の上限との関係は次の章で扱います。
「週末だけ営業できる」という理解でも、大枠としては合っています。ただし正午という境界を予約設定に反映しないと、受け付けてはいけない枠を販売してしまいます。
一方で、この制限が及ぶのは住居専用地域に所在する物件です。新宿区全域が週末のみの営業になるわけではありません。
祝日や年末年始について区独自の取扱いがあるかどうかは、上記の区公式資料と窓口での確認が必要です。他区では祝日に関する例外を置く例もあり、他区の条例をそのまま当てはめることはできません。
自分の物件がどの用途地域にあるかは、新宿区「都市計画情報等の調べ方」で調べられます。地図上の境界付近にある物件の確認手順は、次の記事で具体的に整理しています。
宿泊日数は正午から翌日正午で考える

条例が定めているのは「実施できない時間帯」です。これに対して、年間180日という上限は全国共通のルールに基づく宿泊日数のカウントです。二つは別の物差しなので、混ぜて計算しないでください。
実務では、条例の正午境界に合わせて「正午から翌日正午までの枠」を単位に予約枠を組み立てると、判断を誤りにくくなります。以下は考え方の例です。
- 金曜の午後にチェックインし、土曜の午前にチェックアウトする予約は、営業可能な区間の中に収まります。
- 日曜の午後にチェックインし、月曜の正午までにチェックアウトする予約も、同じ区間の中に収まります。
- 木曜の午後にチェックインする予約は、宿泊が禁止時間帯にかかるため取れません。
チェックイン時刻を正午前に設定したり、チェックアウトを月曜の午後に設定したりすると、禁止時間帯に宿泊がかかる可能性があります。清掃やリネン交換の時間も、金曜正午前と月曜正午後に寄せて組むと運用が安定します。
2026年4月に当事務所で対応した新宿区の案件では、届出の受理後に、清掃契約や消防手続とあわせて、予約サイト上で営業曜日が分かる表示のスクリーンショットの提示を求められた例がありました。これは全案件に共通する提出義務ではなく、施設条件や確認の経過によって取扱いが変わります。
よくある判断は、条例の曜日制限を社内の運営ルールとしてだけ理解し、予約サイト側の受付設定を後回しにすることです。見落とされていたのは、制限が社内の申し送りだけでなく、実際の受付設定にも反映されている必要があるという点でした。
影響が出るのは開業の直前です。受付設定と掲載内容を短期間で作り直すことになり、予約受付の開始が後ろへずれます。
回避方法は、届出書類の準備と同じ時期に、チェックイン・チェックアウト時刻と受付可能曜日をカレンダー設定へ落とし込んでおくことです。相談の適期は、届出提出前、遅くとも予約受付を開始する前になります。
なお、届出後の日数報告で1泊がどの日にカウントされるかという全国共通の数え方は、民泊制度ポータルサイトや観光庁「住宅宿泊事業者編」の記載に従います。数え方の詳細は「年間180日の数え方」で確認できます。条例の禁止時間帯とは別の物差しとして扱う必要があります。
住居専用地域以外には区の曜日制限がない
住居専用地域以外に所在する物件については、新宿区の条例による曜日の制限はありません。法定上限の範囲内であれば、平日を含めて宿泊者を受け入れられます。
曜日制限がない場合でも、確認の対象は次の項目に移ります。用途地域にかかわらず残るものと、新宿区の手続で確認されるものを分けて把握してください。
全国共通で必要になるもの
- 年間180日という提供日数の上限
- 届出住宅としての住宅要件、標識、宿泊者名簿、衛生・安全措置などの基本義務
新宿区の手続で確認されるもの
- 届出前の近隣への書面周知と、その報告
- 廃棄物処理の体制、消防関係の手続、事業開始時の報告
- 家主同居型の場合の居住状況や、住宅内の区画の扱い(区の窓口で確認される事項です)
また、建物の管理規約や賃貸借契約上の使用目的、建築・消防の要件は、条例の曜日制限とは別に確認が必要です。曜日制限がないことと、届出が問題なく進むことは同じではありません。
新宿区の届出手続全体の流れと、周知や廃棄物などの区独自の確認事項は、次の記事にまとめています。
年間約104日という数字は概算にすぎない
金曜正午から月曜正午までの枠を1年分積み上げる計算から、年間約104日という数字が示されることがあります。これは一定の前提を置いた概算であり、確定値ではありません。
実際の営業日数は、次の要素で上下します。
- 週の並び:その年のカレンダーと、1月1日の曜日で枠の数が変わります
- 祝日や年末年始:区独自の取扱いがあるかを新宿区の公式資料で確認します
- 予約の組み方:1泊が続かず空白の枠が出れば、稼働は目標を下回ります
- 年間180日上限:全国共通の上限と重なる範囲でしか販売できません
- 自主的な停止日:清掃や点検のために受付を止める日が生じます
「年間104日は必ず営業できる」「新宿区なら365日営業できる」といった数字を前提とした投資判断は適切ではありません。収支表には、条例上の営業可能枠と、そこから実際に販売できる泊数を分けて記載します。
なお、新宿区の条例が今後見直される可能性を含む動向は、新宿区の民泊条例は今後どう変わる?で扱っています。検討段階の情報を現行ルールとして収支へ織り込まないよう、区分して読んでください。
収支試算は販売可能泊数から逆算する
住居専用地域の物件では、営業できる枠が週末に偏ります。固定費は営業できない期間にも発生するため、売上を先に置くのではなく、販売可能泊数から順に組み立てます。
計算の順序は次のとおりです。
- 用途地域を確定し、条例上の営業可能な時間帯を確認する
- 正午境界とチェックイン・チェックアウト時刻から、販売できる泊数へ換算する
- 年間180日の上限と重ね、年間の販売可能泊数を出す
- 想定稼働率を掛けて、販売見込みの泊数を出す
- 費用を差し引いて手残りを確認する
上の手順へ数字を入れるために、少なくとも次の項目を自分の物件の条件で埋めます。単価や稼働率、手数料率には地域と物件による幅があり、一般値をそのまま当てはめることはできません。
- 年間の販売可能泊数
- 想定稼働率
- 1泊あたりの想定単価と、繁閑差の見込み
- OTA等の仲介手数料
- 清掃費とリネン費(1回あたりの単価と発生回数)
- 廃棄物処理の費用
- 住宅宿泊管理業者への委託費
- 賃料または取得費、水道光熱費、通信費、保険料
- 消防設備や内装の初期投資と、その回収期間
週末中心の運営では、清掃の発生回数が営業枠に対して相対的に多くなります。1泊あたりの清掃単価を掛け合わせたときに手残りがどう変わるかは、物件ごとの試算での確認が必要です。
通年営業を希望する場合は、旅館業の可否を別に確認する
平日を含めて通年で営業したい場合は、旅館業(簡易宿所営業など)の検討に入ります。旅館業は住宅宿泊事業とは別の法律に基づく制度で、住宅宿泊事業に対する区条例の曜日制限は適用されません。
一方で、曜日制限の対象外になることは、住居専用地域で旅館業ができることを意味しません。旅館業には、建物用途や用途地域上の制約、構造・設備、消防、区の要綱に基づく事前手続など、別系統の要件があります。候補物件で成立するかどうかは、住所と建物の条件を前提に個別に確認する必要があります。
3つの前提を並べると、確認すべき対象の違いが分かります。
| 前提 | 区条例による曜日制限 | 別に確認すること |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業・住居専用地域 | 月曜正午〜金曜正午は実施不可 | 年間180日上限、住宅要件、周知、廃棄物、消防 |
| 住宅宿泊事業・住居専用地域以外 | 区の曜日制限なし | 上段と同じ(相違は曜日制限の有無のみ) |
| 旅館業 | 住宅宿泊事業の曜日制限の対象外 | 用途地域、建築、消防、設備、周知など別要件の確認が必要 |
制度の比較は、営業できる曜日だけでは終わりません。初期投資、開業までの期間、運営体制まで含めて並べたうえで判断してください。新宿区で旅館業を検討する場合の要件と手続は、旅館業の記事で扱っています。
正確な住所と営業計画で契約前に確認する
新宿区の曜日制限は、住所の用途地域が決まらないと結論が出ません。契約前であれば、確認結果を契約条件や工程へ反映できます。
- 住居専用地域では、月曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない
- 基本の営業可能時間は、金曜正午から月曜正午まで
- 住居専用地域以外に区の曜日制限はないが、年間180日上限や届出要件は残る
- 年間約104日は概算であり、保証される営業日数ではない
- 通年営業を望む場合は、旅館業の要件を別に確認する
ご相談では、次の点を整理してお伝えします。
- 物件住所の用途地域の判定
- 条例上の販売可能曜日と、予約枠への落とし込み方
- 住宅宿泊事業と旅館業の比較
- 収支試算に入れるべき前提と、置いてはいけない仮定
- 追加で必要な確認先
無料物件チェックをご利用の際は、物件の正確な住所、平面図などの物件資料、想定するチェックイン・チェックアウト時刻、希望する営業日と稼働の考え方、賃貸条件(賃料、使用目的、契約期間など)、契約前か契約後かをお知らせください。なお、無料物件チェックは許可の取得や収益を保証するものではありません。
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著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。



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