東京23区で住宅宿泊事業(民泊新法)を行う場合、営業できる曜日は区名だけでは決まりません。区の条例に加えて、次の条件で結論が変わります。
- 住所の用途地域・指定区域
- 家主居住型か家主不在型か
- 管理者が常駐するか、駆け付けるか
- いつ届出をするか
多くの条例は0時ではなく「正午」を境界にしています。予約カレンダーと収支計画も、正午から翌日正午までを1日として確認します。
週末営業を前提に収支を組む場合、その住所が季節型の制限区域か、改正条例の新規届出扱いかで前提が変わります。物件を契約した後にこの順序で気づくと、想定営業日数と収支の前提を組み直すことになります。
この記事では、東京23区すべての「実施できない期間」を同じ形式で並べ、正午境界の数え方、2026年に施行された改正区の新規・既存の分かれ方、表だけでは結論が出ないケースまでを整理します。対象は住宅宿泊事業法18条に基づく区域・期間の制限で、旅館業や特区民泊は別制度として扱います。本文は2026年8月27日を基準日として、各区の公式ページと条例・手引きを確認して作成しています。
東京23区の営業可能日は区・区域・運営形態で変わる
同じ区の中でも、営業できる曜日が物件ごとに違うことは珍しくありません。条例が制限の対象としているのは「区の全域」とは限らず、住居専用地域、文教地区、学校等の周辺、人口が密集する区域など、区域を指定している場合が多いためです。
さらに、家主居住型か家主不在型かで扱いが分かれる区、管理者が届出住宅内や同一建物・敷地に常駐するかどうかで例外を認める区もあります。区名だけで「平日は禁止」「制限なし」と判断すると、実際の営業可能日と食い違います。
2026年には複数の区で条例が改正され、新規の届出と既存の届出住宅で適用が分かれています。そのため確認は、区名から始めて、住所と用途地域、運営形態と管理体制、届出時期まで四段階で条件を重ねる形になります。具体的な手順は、後半の収支シミュレーションの節で示します。
なお、区域・期間の制限がない、あるいは公式ページで確認できない区であっても、近隣周知、管理体制、廃棄物、標識といった別のルールは存在します。営業日数だけで区を比較すると、運営面の負担の差を見落とします。23区の独自ルール全体を通しで確認したい方は、次の記事で全体像をつかんでから、本記事で営業日を詰めると整理しやすくなります。
まず「正午から翌日正午まで」を1日として読む

東京23区の条例は、制限期間の起点と終点を「正午」で区切っている例が大半です。カレンダー上の1日(0時〜24時)とはずれるため、ここを取り違えると、営業できると思っていた日が実際には実施できない日になります。
年間180日の算定期間
住宅宿泊事業の年間営業日数の上限は180日です。観光庁のFAQでは、この180日は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で数え、1泊を1日として算定すると示されています(観光庁「民泊制度に関するよくあるご質問」)。
暦年(1月〜12月)でも、事業を始めた日からの1年でもありません。年度をまたぐ予約を入れる場合は、どちらの算定期間に含まれるかを確認してください。
そのうえで、区の条例による制限は、この180日の枠とは別に働きます。180日の上限に届く前に、条例の制限で営業できる日が減ることがあります。
月曜正午から金曜正午まで禁止の場合の考え方
例えば「月曜正午から金曜正午までは実施できない」という条例の場合、実施できるのは金曜正午から月曜正午までの時間帯です。この間に泊まれる宿泊は、金曜チェックイン・土曜チェックアウト、土曜チェックイン・日曜チェックアウト、日曜チェックイン・月曜チェックアウトという組み立てになります。
ここで、「金曜から月曜まで営業できる」を単純に「3泊とれる」と読み替えると、実際に取れる泊数と食い違います。チェックイン時刻を正午より前に設定していたり、チェックアウトを正午より後に設定していたりすると、制限期間にかかる可能性があります。予約サイトの受付時刻設定と条例の正午境界は、必ず突き合わせてください。
正午境界の読み方をより詳しく確認したい場合は、住居専用地域で月曜正午から金曜正午までの制限がある新宿区を例にした記事があります。
連泊・チェックイン時刻と法定日数を混同しない
法定の180日は泊数で数え、条例の制限期間は時刻で定められています。軸が違うため、同じ表に混ぜて計算すると数字が合いません。
実務では、次の三つを分けて管理すると混乱しにくくなります。
- 法定日数:4月1日正午からの1年で、宿泊させた泊数を積み上げる
- 条例の制限期間:正午境界で、実施できない時間帯を除外する
- 予約設定:チェックイン・チェックアウト時刻、連泊の可否、清掃に使える時間帯
清掃可能な時間帯も、制限期間の切れ目に影響されます。営業日数だけを運営会社へ伝えると、実際の清掃・鍵の受け渡しの段取りと合わないことがありますので、時刻まで共有してください。
東京23区の営業曜日・時間帯早見表
次の表は、各区が住宅宿泊事業法18条に基づいて定める区域・期間の制限を、「実施できない期間」を軸に整理したものです。営業できる曜日を知るための表ですが、条例は禁止する期間を定める形式が多く、「営業可能日」に読み替えると例外や祝日の扱いが落ちるためです。表の制限期間に当たらない時間帯が、法定日数などの枠内で実施できる候補になります。
一部の区は公式資料が営業できる期間の側で示しているため、その行は公式資料の表記に合わせています。季節で区切る区、区域と運営形態で区切る区もありますので、曜日型でない制限を無理に曜日へ換算していません。表内の類型名も各区の公式資料の表記に合わせているため、区によって呼び方が異なります。
「約○日」という表現は、公式資料が明示している場合だけ用いています。すべて2026年8月27日を基準日として確認し、各行の区名から公式ページを開けるようにしています。「施行・経過措置」欄を「区へ要確認」としている区は、区域・期間の制限自体は公式ページで確認できたものの、条例の当初施行日と現在も有効な経過措置までは公式ページ上で確認できなかった区です。
| 区 | 制限対象区域 | 実施できない期間 | 主な例外・運営条件 | 施行・経過措置 |
|---|---|---|---|---|
| 千代田区 | 文教地区等・学校等周辺、人口密集区域、それ以外に区分 | 家主居住型は文教地区等・学校等周辺で日曜正午〜金曜正午。家主不在型は人口密集区域まで原則全日 | 家主居住・不在の別、管理者の常駐、半径700m以内かつ10分以内の駆け付け要件。人口が密集していない区域は条件を満たせば180日 | 2026年7月1日施行済み。改正前届出への経過措置の個別適用は要確認 |
| 中央区 | 区内全域 | 宿泊できる期間が土曜正午〜月曜正午に限定 | 祝日等の扱い、届出時期による例外の有無は要確認 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 港区 | 住居専用地域4種と文教地区(家主不在型) | 1月11日正午〜3月20日正午、4月11日正午〜7月10日正午、9月1日正午〜12月20日正午 | 家主居住型か家主不在型か、用途地域、文教地区の指定 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 新宿区 | 住居専用地域 | 月曜正午〜金曜正午 | 住居専用地域外は法定上限の範囲で曜日制限なし。敷地が複数の用途地域にまたがる場合と祝日の扱いに注意 | 現行。2026年8月27日時点で新たな経過措置は公式ページ上確認できず |
| 文京区 | 住居専用地域、住居地域、準工業地域、文教地区 | 日曜正午〜金曜正午 | 用途地域、文教地区、敷地境界の位置 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 台東区 | 現行条例の対象区域・類型は区へ要個別確認 | 現行の制限期間と常駐例外の正確な組合せは区へ要個別確認 | 家主居住・不在の別、管理者の常駐、届出の提出日ではなく受理日 | 現行条例は2026年9月30日まで適用。2026年10月1日施行の改正あり。9月30日までに受理済みの施設は新しい平日制限の対象外 |
| 墨田区 | 区全域(2026年4月1日以降に届出受理された家主不在型) | 日曜正午〜金曜正午 | 届出住宅内、同一建物・同一敷地、隣接地等で管理者が常駐する場合等は例外 | 2026年4月1日施行済み。同日前に受理された施設は新しい営業制限の対象外 |
| 江東区 | 区内全域 | 月曜正午〜土曜正午(祝日正午〜翌日正午を除く) | 祝日の扱いと正午境界 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 品川区 | 商業地域・近隣商業地域(文教地区を除く)以外 | 土曜正午〜月曜正午のみ営業可。平日の祝日は営業不可 | 家主居住・不在を問わない。商業地域・近隣商業地域(文教地区を除く)は法定上限の範囲で平日制限なし | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 目黒区 | 区内全域 | 日曜正午〜金曜正午 | 区内全域が対象。正午境界に注意 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 大田区 | 小中学校の敷地周囲100m以内(家主不在型) | 月曜正午〜金曜正午 | 家主居住型は制限が緩和される。個別の法令制限は別途確認 | 2022年1月1日以降適用と公式ページに記載。既存施設等の経過措置は要確認 |
| 世田谷区 | 住居専用地域 | 原則として月曜正午〜土曜正午(休日正午〜翌日正午を除く) | 休日の扱い、敷地が複数の用途地域にまたがる場合 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 渋谷区 | 2026年7月以降の新規届出は、文教地区・住居専用地域に加え第一種・第二種住居地域と準住居地域 | 季節型の実施制限。制限期間を除く営業可能日は公式概要で年間63日 | 個人事業者、管理居室5以下、家主居住又は生活の本拠が同一建物・敷地内・隣接等の条件 | 2026年7月1日施行済み。2026年6月30日以前の届出住宅は旧制度の経過措置 |
| 中野区 | 住居専用地域4種 | 金・土・日・祝日以外は宿泊不可 | 一定の家主同居型は区長の許可を受け、条件付きで平日実施が認められる場合がある。区域外は曜日制限なし | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 杉並区 | 住居専用地域4種の家主不在型 | 月曜正午〜金曜正午(休日前正午〜休日後正午を除く) | 家主不在型が対象。休日の扱いに注意 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 豊島区 | 2026年12月15日までは対象区域の定めなし(12月16日以降は指定住居系・準工業・文教地区等とそれ以外に区分) | 同日までは法18条の区域・期間の制限なし | 周知・管理等の別の区ルールは存在する。12月16日施行の制限は後述 | 現行は2026年12月15日まで。公布済みの将来施行条項あり |
| 北区 | 区へ要個別確認(理由は表の直後の注記を参照) | 区へ要個別確認 | 家主不在型の管理業者、建築士による確認、安全措置、現地調査等の別ルールがある | 公式ページ上、法18条制限の施行・経過措置を確認できず |
| 荒川区 | 区内 | 月曜正午〜土曜正午(祝日正午〜翌日正午を除く) | 区域の例外の有無は要確認。祝日と正午境界に注意 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 板橋区 | 住居専用地域4種 | 日曜正午〜金曜正午(祝日前正午〜翌日正午を除く) | 家主居住型等、苦情等へ即時対応できる一定の形態は対象外 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 練馬区 | 住居専用地域 | 月曜正午〜金曜正午 | 金曜正午〜月曜正午と祝日前正午〜祝日翌日正午は実施可。建物敷地の過半が住居専用地域かで判断 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 足立区 | 住居専用地域 | 月曜正午〜金曜正午。加えて12月31日正午〜1月3日正午 | 祝日正午〜翌日正午は実施可 | 現行。当初施行日と現在有効な経過措置は区へ要確認 |
| 葛飾区 | 2026年4月以降の新規届出(商業地域は制限対象外) | 原則として月曜正午〜土曜正午(祝日・年末年始を除く) | 家主居住型、管理者が施設に常駐する場合等、商業地域は制限対象外 | 2026年4月1日施行済み。2026年3月31日までに適法な届出がされた住宅は当分の間、第7条の制限対象外 |
| 江戸川区 | 住居専用地域・住居地域(住宅宿泊管理業者へ委託する類型) | 曜日型ではなく区域型・運営形態型。対象区域では新規に実施できない | 家主が自ら管理する類型も、対象区域で3か月以上の居住等の条件を確認する | 2026年7月1日施行済み。2026年6月30日までに適法な届出がなされた住宅は条例6条の制限対象外 |
北区については、公式の届出ページと観光庁の自治体窓口一覧では、法18条の区域・期間制限を定める条例を確認できませんでした。制限がない区と断定できないため、候補物件がある場合は区へ個別に確認してください。管理業者や安全措置に関する別のルールは公式ページで案内されています。
表の使い方は次のとおりです。まず候補物件の区の行を開き、次に「制限対象区域」に自分の住所・用途地域が当たるかを確認します。当たる場合は「実施できない期間」を予約カレンダーへ反映し、「主な例外・運営条件」で自分の運営形態が例外に該当しないかを見ます。最後に「施行・経過措置」で、届出予定日がどちらの制度に入るかを判断します。
区域・期間の制限がない、または確認できない区が、そのまま「始めやすい区」になるとは限りません。営業日数の制限の有無と、届出の通しやすさや運営負担は別の論点です。厳しさや運営負担を比較したい場合は、次の記事で判断軸を確認できます。
2026年改正区は新規・既存と届出時期を分けて見る
2026年は、渋谷区、千代田区、江戸川区が7月に、墨田区と葛飾区が4月に、それぞれ改正条例を施行しました。台東区は2026年10月1日、豊島区は2026年12月16日に施行が予定されています(いずれも同基準日時点)。
これらの区では、同じ住所・同じ建物でも、届出が改正前か改正後かで営業できる日が変わります。改正区を検討する場合は、必ず「新規か既存か」から確認してください。
渋谷区・千代田区
渋谷区は2026年7月1日以降の新規届出について、制限区域に第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域を加えました。制限期間を除く営業可能日は、区の改正概要で年間63日と示されています。
例外に当たるかどうかは、次のような条件で判断します。
- 個人事業者であること
- 管理する居室が5以下であること
- 家主居住又は生活の本拠が同一建物・敷地内・隣接であること
2026年6月30日以前の届出住宅には、旧制度の経過措置があります。
渋谷区の改正は住宅宿泊事業と旅館業の両方に及びます。制度別・時期別の全体像は次の記事で確認してください。
千代田区は2026年7月1日施行の改正で、文教地区等・学校等周辺、人口密集区域、それ以外の区域に分け、さらに家主居住型と家主不在型で制限を変えています。家主居住型は、文教地区等・学校等周辺で日曜正午から金曜正午まで実施できません。
家主不在型は、人口密集区域までの区域では原則として全日実施できません。人口が密集していない区域では、管理者の常駐、又は半径700メートル以内かつ10分以内で駆け付けられる体制などの要件があります。要件を満たす場合に、180日の枠内で実施できる仕組みです。
改正前に届出済みの施設への経過措置がどこまで及ぶかは、個別に区へ確認が必要です。
墨田区・葛飾区
墨田区は2026年4月1日施行の条例で、同日以降に届出が受理された家主不在型について、区全域で日曜正午から金曜正午までの実施を制限しています。届出住宅内、同一建物・同一敷地、隣接地等で管理者が常駐する場合等は例外とされています。同日より前に受理された施設は、新しい営業制限の対象外です。
葛飾区も2026年4月1日施行で、同年4月以降の新規届出は原則として月曜正午から土曜正午までの実施ができません。祝日と年末年始は除かれ、家主居住型、管理者が施設に常駐する場合等、及び商業地域は制限の対象外とされています。2026年3月31日までに適法な届出がされた住宅は、当分の間、第7条の制限対象外です。
どちらの区も、分岐点は営業開始日ではなく届出の受理時期です。「4月より前から準備していた」という経緯は、判断材料になりません。
江戸川区
江戸川区は2026年7月1日施行の改正で、曜日型ではない制限を導入しました。住宅宿泊管理業者へ委託する類型は、住居専用地域と住居地域で新たに実施できません。家主が自ら管理する類型でも、対象区域では3か月以上の居住等の条件を確認する必要があります。
2026年6月30日までに適法な届出がなされた住宅は、条例6条の制限対象外とされています。ここでいう「適法な届出」は、書類が区へ到達しているだけでなく、形式上適法であることが前提です。到達日と補正の経過を、区の資料で確認してください(江戸川区「住宅宿泊事業を開始したい方へ」)。
江戸川区を「営業日数の制限がない区」と理解すると、区域型の制限を見落とします。曜日ではなく、区域と運営形態で実施可否が決まる仕組みです。
豊島区
豊島区は、同基準日時点では法18条に基づく区域・期間の制限がありません。ただし、これは周知や管理等の区ルールがないという意味ではありません。
公布済みの改正では、2026年12月16日から、区内全域のうち指定住居系・準工業・文教地区等以外の区域で、1月15日正午〜3月15日正午、4月11日正午〜7月1日正午、9月1日正午〜12月15日正午が制限期間となります。指定住居系・準工業・文教地区等は全期間が制限対象です。
施行日前に受理した既存の届出住宅等には、全期間制限の規定を適用せず、区内全域を季節型の制限として扱う特例が設けられています。例外となる「規則で定める住宅」の具体的な範囲は、規則で確認が必要です。豊島区で12月をまたぐ計画を立てる場合は、施行前と施行後の営業可能日を両方試算してください。
表だけで結論を出せないケース
早見表は候補を絞るためのものであり、特定住所の可否を決めるものではありません。次の三つに当たる場合は、区の窓口や公式地図での個別確認が必要です。
用途地域・町丁目・学校等周辺の境界
住居専用地域か否か、文教地区に入るか、学校等から何メートル以内か。これらは道路一本、敷地の一部で結論が変わります。敷地が複数の用途地域にまたがる場合、練馬区のように「敷地の過半がどちらか」で判断する区もあります。
地図上で境界に近い物件は、自分で判断せず、区の都市計画情報と担当窓口の両方で確かめてください。大田区のように学校敷地から100メートルという距離基準を用いる区では、測り方の起点も確認事項になります。
家主居住・不在と管理体制
同じ区・同じ用途地域でも、家主居住型か家主不在型かで制限が変わる区があります。さらに、管理者が届出住宅内に常駐するのか、同一建物・敷地・隣接地にいるのか、離れた拠点から駆け付けるのかで、例外に該当するかどうかが分かれます。
よくある判断は、区ごとに1行で営業日を整理することです。見落とされるのは、同じ区・同じ区域でも、家主居住型、管理者常駐型、駆け付け型で結論が変わる点です。弊所が扱った案件でも、当初は「区ごとに1行」で整理していたところ、この分岐に後から気づき、行を分けて作り直したことがあります。
営業日数の前提がずれると、収支表と運営委託の条件を組み直すことになります。回避方法は、区名ではなく「区+区域+運営形態」を1行の単位にすることです。相談時期は、候補物件を絞り込む段階、遅くとも運営体制と管理方法を決める前が目安です。
届出到達日・受理日・補正と経過措置
2026年の改正区で最も誤解が多いのが、経過措置の分岐点です。基準となるのは、書類を提出した日とは限りません。台東区では、提出日ではなく、不備のない一式が受理された日が分岐になると案内されています(台東区「届出日の考え方」)。
よくある判断は、「施行日の直前に提出すれば旧制度で営業できる」というものです。見落とされるのは、補正が入れば受理日が施行日以降にずれるという点です。その結果、旧制度前提で組んだ営業日数が使えず、収支計画と運営委託の条件を作り直すことになります。
回避方法は単純です。申請前に、その区が到達日・受理日・形式上適法な届出のどれを基準にしているかを公式資料で確認し、補正が生じる余地のある書類を先に潰しておきます。実務上は、物件契約前、遅くとも届出書類の作成に入る前が相談時期です。過去の案件でも、この確認を先に行ったかどうかで、施行日直前のスケジュールの安全度が大きく変わりました。
営業可能日を収支シミュレーションへ入れる
営業日数は、収支計画の中で最初に固定すべき前提です。ここでは、一般的な稼働率や単価を当てはめるのではなく、候補住所で確認した日数をそのまま入力する方法をとります。
手順は次のとおりです。
- 早見表で候補区の「実施できない期間」を確認する
- 住所の用途地域・指定区域を公式地図で確認し、制限対象かどうかを決める
- 家主居住・不在と管理体制を決め、例外に該当するかを確認する
- 届出予定日から、改正前後どちらの制度が適用されるかを確認する
- 残った実施可能な期間を、正午境界のまま月別の泊数へ落とす
- 4月1日正午からの1年で、法定180日の枠に収まるかを確認する
5の段階で、曜日ではなく時刻まで残しておくのが要点です。金曜正午から月曜正午までであれば、チェックイン・チェックアウト時刻を含めて何泊とれるのかが決まり、清掃と鍵の受け渡しに使える時間も見えます。
運営を委託する場合は、営業日数だけでなく、実施できない期間、清掃可能な時間帯、連泊設定の可否をあわせて共有してください。営業日数だけを伝えると、予約サイト側の設定が制限期間にかかることがあります。予約サイト上の営業曜日表示も、実施できない期間と整合させておくと、後の手戻りを避けられます。
季節型の制限がある区では、月別の偏りも確認してください。年間の合計日数が同じでも、繁忙期に営業できるかどうかで収支は変わります。
まとめ・営業日を含む無料物件チェック
東京23区の営業可能日は、区名だけでは決まりません。区域、運営形態、届出の時期といった条件を重ねて、初めて「この住所で何日営業できるか」が決まります。
- 多くの条例は正午境界。予約設定と収支は正午から翌日正午を1日として組む
- 法定180日は4月1日正午からの1年で、1泊を1日として数える
- 2026年施行・施行予定の改正区は、新規か既存か、届出の受理時期で適用が分かれる
- 区域・期間の制限がない区でも、周知・管理等の別ルールは存在する
- 用途地域の境界、運営形態、経過措置に当たる場合は個別確認が必要
なお、この記事は住宅宿泊事業の区域・期間制限を扱っています。旅館業や特区民泊は別制度であり、同じ住所で必ず通年営業できるとは限りません。制度の選び直しを検討する場合は、建物用途、消防、建築の条件を含めて改めて確認してください。
民泊GOでは、候補住所の営業可能日と経過措置を確認する無料の物件チェックを行っています。ご相談の際は、次の情報をご用意ください。
- 物件住所と用途地域
- 家主居住型か家主不在型か
- 管理方法(常駐、同一建物・敷地、駆け付けのいずれか)
- 届出の予定日、契約前か契約後か
- 希望する営業曜日・期間
ご相談では、その住所で実施できない期間、例外に該当する可能性、経過措置の適用、収支へ入れる営業日数、そして区へ個別に確認すべき事項を整理してお伝えします。許可取得や収益を保証するものではありませんが、物件契約や運営委託の前に、判断の前提を揃えることができます。
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著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。



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