「気に入った物件を見つけた。でも本当にこの物件で民泊の許可が取れるのかどうか、自分では判断できない…」
民泊の許可が取れるかどうかは、物件の用途地域・管理規約・設備基準・学校や病院との距離など、複数の要素を総合的に判断する必要があります。自己判断で進めると、「物件を契約した後に許可が取れないとわかった」というケースが後を絶ちません。本記事では、行政書士が実際に物件診断を行う際に確認する判定基準を解説します。物件契約前に必ずご確認ください。
判定基準①:用途地域
用途地域が民泊の可否を決める最初の壁
物件の用途地域は、民泊の許可が取れるかどうかの最初の判断基準です。商業地域・近隣商業地域・準住居地域・住居地域などは旅館業許可が比較的取りやすいエリアです。一方、住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域)では旅館業許可の取得が原則として認められません。さらに工業専用地域では、住宅そのものの建築が制限されるため、民泊新法の届出も含めて営業自体が困難です。用途地域は各市区町村の都市計画情報サービスや役所の窓口で確認できます。
自分の物件が住居専用地域かどうかの具体的な調べ方は、「自分の物件は「住居専用地域」?民泊が週末しか営業できないエリアの調べ方」で解説しています。
判定基準②:管理規約(マンションの場合)
管理規約の確認が必須
マンション(区分所有・賃貸)の場合、管理規約に民泊禁止の記載がないかどうかが重要な判定基準になります。「民泊禁止」「宿泊業禁止」などの記載がある場合は許可申請ができません。民泊に関する記載がない場合は解釈が分かれるため管理組合への確認が必要で、「民泊可」と明記されている場合は許可申請が進めやすくなります。行政の許可審査自体は管理規約の内容まで確認しないケースもありますが、規約違反のまま営業を始めると管理組合との民事上のトラブルに発展するリスクがあるため、必ず事前に確認してください。
管理規約に「民泊禁止」と書かれていた場合の交渉方法は、「管理規約に「民泊禁止」の文字が!大家さんと交渉して特例を勝ち取る方法」で解説しています。
判定基準③:設備基準
旅館業許可で求められる主な設備基準
旅館業許可(簡易宿所)の取得には、客室面積が1人あたり3.3平方メートル以上であること(自治体によって基準が異なる場合がある)、居室として十分な採光・換気が確保されていること、自動火災報知器・誘導灯などの消防設備が設置されていること(消防署への事前相談が必須)、宿泊者5名につき1か所以上のトイレが確保されていること、宿泊者が使用できる浴室・洗面設備が確保されていることなど、複数の基準を満たす必要があります。加えて2026年5月の国の通知により、延べ床面積200平方メートル以下の物件でも、建築士による建築基準関係規定への適合証明書の取得が必要になった点も踏まえて計画してください。
判定基準④:学校・病院との距離
一定距離内では照会が必要になる
旅館業許可の申請では、小学校・中学校・高校・幼稚園・保育園・病院・図書館・児童福祉施設などから一定距離(多くの自治体で100メートル)以内の物件は、保健所からこれらの施設への「照会」が行われます。照会先の施設が難色を示した場合、許可が下りない、または条件付きでの許可となる可能性があります。距離の基準は自治体によって異なるため、事前に管轄の保健所に確認することが重要です。
この「照会」制度の実態と対策については、「民泊は学校から100m以内だとアウト?旅館業法の「照会」の実態と対策」で詳しく解説しています。
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判定基準⑤:建物の構造・安全性
建物が民泊の基準を満たしているか
接道義務を満たさない再建築不可物件は、許可取得の難易度が上がる場合があります。市街化調整区域では原則として宿泊施設の新設は認められず、既存建物を活用する場合も別途協議が必要です。採光基準を満たさない無窓居室は客室として使用できないため、建物の間取り自体が民泊利用に適しているかどうかも事前に確認しておく必要があります。
判定基準を組み合わせた総合判断が重要
1つの基準だけで判断せず、5つを総合的に確認する
実際の物件診断では、この5つの判定基準のどれか1つが問題なくても、別の基準でつまずくケースが少なくありません。例えば用途地域は問題なくても管理規約で禁止されている、あるいは管理規約は問題なくても学校が近くにあり照会が必要になるなど、複合的に確認して初めて「この物件で許可が取れるかどうか」が判断できます。行政書士による物件診断では、これら5つの基準を一度にまとめて確認できるため、個別に役所・管理会社・消防署へ問い合わせる手間と時間を大幅に削減できます。
個別の物件で判断に迷うケースは専門家に相談する
ベランダなし・無窓居室・ロフト・地下室など特殊な間取りは特に注意
ベランダ・バルコニーがない物件の避難経路の代替案、無窓居室を客室にするための採光基準のクリア方法、ロフトを寝室として使う場合の面積算入や安全基準、地下室を活用する場合の湿気対策と容積率の計算など、間取りが特殊な物件では判定が一段と複雑になります。こうした個別性の高い判断は、行政書士や建築士によるチェックを受けたうえで進めることを強くおすすめします。
特殊な間取りについては、「ベランダ・バルコニーがない物件でも民泊許可は下りる?避難経路の代替案」、「民泊で窓がない「無窓居室」を客室にできる?採光基準をクリアする方法」、「民泊でロフトを寝室にしたい!面積算入とハシゴの安全基準を解説」、「地下室を民泊に活用できる?湿気対策と容積率の計算ルール」、「築50年の古民家を民泊にしたい!図面がない場合の現況図の作り方」でそれぞれ詳しく解説しています。
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まとめ
- ①用途地域:商業地域・住居地域なら旅館業許可が取りやすい。住居専用地域は原則不可
- ②管理規約:マンションは民泊禁止の記載がないか必ず確認する
- ③設備基準:客室面積・消防設備・採光・トイレの基準、200㎡以下でも必要な適合証明書を確認する
- ④距離基準:学校・病院から100m以内の場合は照会が必要
- ⑤建物の構造:再建築不可・市街化調整区域・無窓居室などの問題がないか確認する
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▶ 詳しくは「マンションで民泊はできる?管理規約の確認と変更手順を解説」をご覧ください。
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監修者


渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。


