お客様
行政書士
「2部屋を借りるので、各180日で年間の計画を組んでよいですか」というご質問をよくいただきます。結論から述べると、180日の上限は事業者の合計日数ではなく、届出住宅ごとに適用されます。届出住宅とは、自治体へ届け出て受理された住宅の範囲を指す言葉です。
ただし、例外があります。複数住戸や複数棟を一つの届出住宅として届け出ている場合は、そのうちどれか1室・1棟に人を宿泊させた日を全体で1日と数え、その届出住宅全体で180日までとなります。
つまり、「部屋が2つあるから枠も2つ」とは限りません。枠が分かれるかどうかは、不動産としての物件数や部屋数ではなく、届出を受け付ける自治体(保健所設置市等の届出受付主体)に受理された届出住宅の範囲で決まります。
ここを取り違えたまま契約や予約設計を進めると、想定していた営業日数を販売できないまま年度末を迎えることも起こり得ます。すでに賃料と初期投資が動いているため、後から取り得る手は限られます。
この記事では、届出住宅・届出番号・住戸・棟という言葉を整理したうえで、4つのケースで自分の届出単位を判定する方法、範囲を確認する資料と質問、複数施設の予約・報告の分け方、オーナーチェンジ時の残日数までを順に説明します。読み終えると、自社の物件と届出住宅の対応を1枚の図にでき、契約前に何を確認すべきかが分かります。
通常の1泊の数え方、年度の区切り、正午をまたぐ宿泊の扱いは、次の記事で確認してください。
枠が分かれるかどうかを先に確かめたい場合は、契約前にご相談ください。図面や検討段階の情報だけでも、どこまでを1件の届出住宅として想定できるかの見通しを整理できます。
複数物件の180日を一文で答える
数える単位と枠の関係を、先に一覧で示します。
| 数える単位 | 180日の枠 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事業者(法人・個人) | 枠の単位ではない | 複数施設の日数を合計して180日を管理するのではない |
| 届出住宅(受理された1件の届出) | この単位ごとに180日 | 建物や部屋の数ではなく、受理された届出の範囲で決まる |
| 一つの届出住宅に含まれる複数住戸・複数棟 | 全体で180日 | どれか1室・1棟に宿泊があれば、全体で1日と数える |
| 同一建物内で別々に受理された届出住宅 | 各届出住宅に180日 | 別室であることだけを理由に、自動的に別の届出になるわけではない |
判断の出発点は、不動産広告に書かれた「2物件」「2部屋」という数え方ではありません。手元の届出書と届出番号が何件あり、その1件がどこまでの範囲を含んでいるかを確認するところから始めます。
180日は届出住宅ごとに数える
住宅宿泊事業では、人を宿泊させた日数の上限が届出住宅ごとに適用されます。したがって、別々の届出住宅として受理されていれば、それぞれに180日の上限があります。一方で、一つの届出住宅の中でいくつ部屋があっても、枠は一つです。
この違いは、日常語の「物件」では表せません。まず言葉の対応を揃えます。
届出住宅・届出番号・住戸・棟は同じ意味ではない
| 言葉 | 意味 | 180日との関係 |
|---|---|---|
| 事業者 | 届出を行う法人または個人 | 枠の単位ではない |
| 建物・棟 | 物理的な建築物の単位 | それだけでは枠を決めない |
| 住戸・部屋 | 建物内の区画(○○号室など) | それだけでは枠を決めない |
| 届出住宅 | 届出が受理された住宅の範囲 | この単位で180日を数える |
| 届出番号 | 受理された届出住宅ごとに付される番号 | 枠・記録・報告を分ける実務上の鍵 |

実務では、届出番号を軸に考えると混乱しにくくなります。届出番号が2つあれば管理すべき枠も記録も2系統、1つであれば住戸が複数あっても1系統です。
同じ届出住宅で同日に複数組が泊まっても1日
一つの届出住宅に、同じ日に複数の宿泊者グループが泊まった場合でも、日数は1日として数えます。組数や人数で日数が増えるわけではありません。この算定の考え方は、観光庁の住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)で確認できます(2026年8月31日確認)。
宿泊者数や延べ宿泊者数は、定期報告のために別途記録します。日数と人数は別の数字として管理してください。
一つの届出住宅に複数住戸・複数棟を含めた場合は全体で180日
一つの届出住宅として複数の住戸や複数の棟を届け出ている場合、そのうちどれか1室・1棟に人を宿泊させた日は、届出住宅全体として1日と数えます。3棟のうち1棟だけを稼働させた日も、3棟すべてを稼働させた日も、同じ1日です。
この取扱いは、観光庁の住宅宿泊事業法に関するFAQと上記の施行要領で示されています(2026年8月31日確認)。
したがって、母屋と離れ、あるいは同一敷地内の複数棟をまとめて1件の届出にしている場合、棟数を増やしても年間の営業可能日数は増えません。増えるのは同じ日に受け入れられる部屋・棟の数であり、日数の枠ではありません。
4ケースで自分の届出単位を確認する
次の4ケースを、同じ軸で比較します。自社の状況に近いものを選び、「何を確認するか」「日数がどう動くか」「記録をどう分けるか」を確かめてください。
| ケース | 数え方 | 主に確認する資料 | 記録の分け方 |
|---|---|---|---|
| 1:独立した1住宅を1届出住宅として届出 | その届出住宅で180日 | 受理済み届出書、届出番号 | 1系統 |
| 2:別々の届出住宅を複数運営 | 各届出住宅にそれぞれ180日 | 各届出書、各届出番号 | 届出番号ごとに分ける |
| 3:複数住戸・母屋と離れを1届出住宅として届出 | 全体で180日 | 届出書の別紙、図面、対象範囲 | 1系統にまとめる |
| 4:同一建物内で受理済みの複数届出住宅を運営 | 各届出住宅にそれぞれ180日 | 各届出書、各届出番号、住宅要件の確認結果 | 届出番号ごとに分ける |

ケース1:独立した1住宅を1届出住宅として届ける
もっとも基本の形です。その届出住宅について、年間180日の上限を管理します。判断に迷う要素は少なく、日数管理と定期報告も1系統で完結します。
ケース2:同一事業者が別々の届出住宅を複数運営する
同じ事業者が2件の届出住宅を運営している場合、日数の上限はそれぞれの届出住宅に適用されます。A住宅の稼働がB住宅の枠を減らすことはありません。
ここで注意したいのが表現の仕方です。「2件だから年間360日営業できる」という言い方は、1つの施設で長く営業できるかのような誤解を招きます。正しくは「180日の枠を持つ届出住宅が2つある」であり、A住宅で180日を超えることはできません。販売計画は、施設をまたいだ合計ではなく、届出番号ごとの残日数で組み立てます。
ケース3:複数住戸・母屋と離れを一つの届出住宅として届ける
前述のとおり、1件の届出に含まれる住戸・棟は、どれが稼働しても全体で1日、年間の上限も全体で180日です。このケースで実務上つまずきやすいのは、日数の理解よりも記録の取り方です。
たとえば「今日は離れだけだからカウントしない」という自己流の運用が生じがちです。実際には稼働日として1日を消費しているため、年度後半に残日数が想定と合わなくなります。稼働記録は棟別に取りつつ、日数カウントは届出住宅単位で1本にまとめてください。
ケース4:同一建物内で受理済みの複数届出住宅を運営する
同じマンションの複数住戸を取得した場合、住戸ごとに届出が受理されていれば、それぞれに180日の上限があります。ただし、別室であることだけを理由に、当然に別の届出になるわけではありません。
各住戸について、住宅としての要件、設備、使用する権限(所有・賃貸借・転貸の承諾など)を満たし、届出受付主体に受理されて初めて、別の届出住宅として扱われます。届出に必要な情報と住宅の区分は、観光庁の住宅宿泊事業者向けの届出手続ページで確認できます(2026年8月31日確認)。
なお、同一建物内で届出を分けられるかどうかは、建物の状況、管理規約、自治体の運用によって結論が変わります。本記事では個別の分割可否を保証できません。図面と契約条件を持って、届出先の自治体へ事前に確認してください。
枠を増やす目的で届出を分けるという発想は、順序が逆になります。住宅としての要件や使用する権限の裏づけがないまま手続へ進むことになるためです。その場合、受理されない、あるいは運営開始後に是正を求められるおそれがあります。各住戸が単独で届出住宅として成立するかを先に確かめ、その結果として枠が分かれるかどうかが決まります。
自社のケースが1〜4のどれに当たるか、図面段階で判断がつかない場合は、契約前の確認をおすすめします。
届出住宅の範囲をどの資料で確認するか
判定に使うのは、広告資料ではなく届出関係の書類です。ただし、すでに届出済みの物件か、これから届け出る物件かで、そろう資料は変わります。
届出済みであれば、受理済みの届出書と届出番号から範囲を照合します。まだ届出をしていない物件であれば、図面、管理規約、使用する権限を示す資料をそろえたうえで、届出先の自治体へ範囲を確認する流れになります。
受理済み届出書・別紙・図面・届出番号を照合する
既に届出済みの物件であれば、受理された届出書の控え、別紙、添付図面、届出番号を並べます。確認するのは次の3点です。
- 届出番号が何件あるか
- 1件の届出に含まれる住戸・棟がどこまでか
- 図面上の範囲が、実際に貸し出している範囲と一致しているか
図面の範囲と運営の実態がずれている場合は、日数の数え方だけでなく、届出内容の変更が必要になる可能性があります。自己判断で運用を続けず、届出先へ確認してください。
登記・広告・OTAリスティングだけで判断しない
登記上の建物が1棟でも、届出が複数に分かれていることがあります。逆に、OTAで2つのリスティングを出していても、届出住宅としては1件というケースもあります。掲載の数と届出の数は一致しません。
売買や賃貸の資料に「民泊可」「2部屋運営中」と書かれていても、それは届出の範囲を示す資料ではありません。仲介会社や前所有者の説明を受けた場合も、届出書と届出番号の写しで裏づけを取ります。
取得・賃貸借契約前に自治体へ確認する質問
物件が決まった段階で、届出先の自治体へ次の点を確認します。所在地、住戸数、図面を示したうえで質問すると、前提のずれを防げます。
- 一つの届出住宅に含めることを想定している住戸・棟の範囲
- 各住戸が満たすべき住宅としての要件、設備、使用する権限の示し方
- 家主不在型に当たるかの判断、必要な安全措置、管理業務の委託の要否
- 自治体の条例による区域・期間の制限の有無
条例による区域・期間の制限は、物件の所在地ごとに適用されます。同じ事業者の複数物件でも、所在する自治体が異なれば確認先も内容も別です。自治体ルールの調べ方は、自治体の上乗せ条例をまとめた記事で確認してください。
複数施設は届出番号ごとに予約・報告を管理する
複数施設の運営でつまずきやすいのは、日数の理解よりも記録の分散です。予約はOTA、清掃は管理会社、報告は担当者と分かれるため、どの数字がどの届出住宅のものか分からなくなります。届出番号を共通の鍵にして、1枚の管理表へ集約します。
予約経路と実泊日を届出番号へひも付ける
複数のOTAや自社サイトから予約を受けている場合、経路ごとに宿泊日を集計しても、届出住宅単位の日数にはなりません。予約1件ごとに届出番号を付し、実際に宿泊があった日を届出住宅単位で集計します。
チェックイン前のキャンセルや、予約はあるが宿泊がなかった日の扱いを誤ると、年度累計がずれます。予約済みの日と、実際に宿泊があった日は列を分けて管理してください。
定期報告と年度残日数を分ける
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに宿泊日数などを定期的に報告します。報告する項目は、人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳です。手続と様式は、観光庁の定期報告のページで確認できます(2026年8月31日確認)。
施設数が多い場合は、報告に用いる行政のオンラインシステム側で、CSVによる一括登録も利用できます。社内の管理表とは別の仕組みですので、どちらの数字を正としているかを決めておいてください。
報告用の集計期間と、180日の上限を管理する年度の区切りは目的が違います。同じ表の中でも列を分け、「報告済みの期間」と「年度累計・残日数」を別に持つと取り違えが起きません。
作成者・確認者・提出者を決める
管理表には、少なくとも次の列を持たせます。
- 届出住宅名、届出番号、住戸・棟、所在地
- 予約経路、宿泊日、年度累計、予約済みの日
- 報告期間、提出日、訂正履歴、担当
そのうえで、数字を入力する人、確認する人、提出する人を分けて決めます。施設が増えるほど、入力と提出を同じ人が兼ねる体制では見落としに気づきにくくなります。担当が1人の場合は、入力する日と提出前に確認する日を分けるだけでも、取り違えを減らせます。
管理業務を管理会社へ委託している場合も、日数と報告の最終的な責任は事業者側にあります。委託先との間で、どの情報をいつ提供してもらうかを取り決めておいてください。管理業務の委託と情報提供の考え方は、観光庁の住宅宿泊事業者の責務に関するページで確認できます(2026年8月31日確認)。
年間の稼働をどの月に配分するかという計画面は、営業日数の配分を扱った記事で整理しています。
事業者変更・オーナーチェンジでも180日はリセットされない
運営中の民泊物件を取得する場合、注意したいのが残日数です。事業者が変わっても、同じ年度に当該届出住宅で人を宿泊させた日数は通算されます。この取扱いは、観光庁の住宅宿泊事業法に関するFAQで示されています(2026年8月31日確認)。
同じ年度の実績は届出住宅ごとに引き継がれる
枠は事業者ではなく届出住宅に付いています。したがって、前の事業者が既に150日稼働させていた物件を取得した場合、その年度に自社が営業できる日数は、残りの範囲にとどまります。届出をやり直しても、年度の実績が消えるわけではありません。
当事務所にも、同様の相談が寄せられたことがあります。よくある判断は「事業者が変わるのだから、日数も新規扱いになる」というものです。届出を出し直せば新しい枠から始められる、という前提で取得を進めていました。
見落とされていたのは、日数が届出住宅ごとに通算されるという点です。取得時点で当該年度の残日数はほとんどなく、年度末まで営業できませんでした。結果として、想定していた初年度の売上が立たないまま固定費だけが発生しました。
回避方法は、取得前に当該年度の宿泊日数の実績と報告内容を確認し、残日数を前提に初年度の計画を組むことです。相談の適期は、売買契約や事業譲渡契約の締結前になります。
取得前に残日数・過去報告・既存予約を確認する
取得前に確認しておきたいのは、次の3点です。
- 当該年度に人を宿泊させた日数の実績
- 直近の定期報告の内容と提出状況
- 引き継ぐ既存予約の件数と宿泊日
引き継ぐ予約も残日数を消費します。譲渡日以降の予約が残日数を超えていないかを、契約前に照合してください。事業譲渡に伴う届出のやり直し、OTAアカウントの切替、消防関係の調査といった手続は範囲が広いため、別記事で扱います。
自分で整理できる範囲と契約前に相談すべき境界
すべてを専門家に依頼する必要はありません。自社でできる部分と、個別確認が必要な部分を分けます。
受理済み届出の番号別管理は自社でできる
既に届出が受理され、範囲が確定している施設であれば、届出番号ごとに日数と報告を管理する作業は自社で回せます。管理表の列を決め、担当を分け、月次で年度累計を確認する運用を作れば十分です。
届出単位の設計・分割可否は図面を持って個別確認する
一方で、複数住戸や複数棟をどの単位で届け出るかは、ケース4で述べたとおり一般論では決められません。図面、管理規約、使用する権限を示す資料をそろえ、対象とする住戸・棟の範囲を挙げたうえで、届出先へ確認します。確認の結果によって、営業可能日数と収支の前提が変わります。
複数住戸の契約・工事前に確認する
確認の適期は、購入の申込みや賃貸借契約、内装工事の発注より前です。契約後に届出単位が想定と違うと分かっても、賃料や工事費は動き始めています。逆に契約前であれば、対象住戸の範囲や契約条件へ確認結果を反映できます。
まとめ・契約前に確認する
- 180日の上限は事業者の合計ではなく、届出住宅ごとに適用される
- 一つの届出住宅に複数住戸・複数棟を含む場合は、どれか1室・1棟の宿泊で全体1日、全体で180日
- 別々の届出住宅が2件あれば、それぞれに180日の枠がある。1施設で180日を超えられるわけではない
- 同一建物内で届出を分けられるかは建物の状況と自治体の運用によって変わり、別室であることだけでは決まらない
- 複数施設は届出番号を鍵に、予約、実泊日、定期報告、条例、担当を分けて管理する
- 事業者が変わっても、同じ年度の日数は届出住宅ごとに通算される
180日制限の全体像を先に押さえたい場合は、180日制限の基本を解説した記事を、通年営業を前提に制度を選び直す場合は、180日制限のない制度を比較した記事をご覧ください。
ご相談では、次の点を整理してお伝えします。
- 届出住宅として届け出る候補範囲
- 各住戸が満たすべき住宅の要件
- 管理業務の委託の要否
- 必要となる安全措置
- 所在地の条例
- 届出番号ごとの管理方法
お手元にあると確認が早い資料は、次のとおりです。
- 物件の所在地
- 間取り図・配置図
- 登記事項
- 賃貸借契約書、転貸の承諾書
- 管理規約
- 既存の届出書と届出番号
資料がそろっていなくても、所在地、住戸数、検討段階だけで初回のご相談は可能です。
なお、ご相談は届出の受理や収益を保証するものではありません。
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著者


行政書士 渡邊 雄一郎
トライアド行政書士事務所代表。法科大学院修了・法務博士・行政書士。民泊専門サービス「民泊GO」を運営し、住宅宿泊事業の届出、旅館業許可、特区民泊を中心に、消防・建築・近隣対応まで含めた民泊の立ち上げ支援を行っています。



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